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ブロックチェーンの未来 金融・産業・社会はどう変わるのか

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仮想通貨だけじゃない、ブロックチェーンの実用例

日本総合研究所副理事長 翁百合氏、東京大学大学院教授 柳川範之氏、京都大学公共政策大学院教授 岩下直行氏

3 金融取引や商取引のインフラを提供

 仮想通貨以外に、分散型台帳システムを活用し、金融商品や商品などさまざまな資産を取引することによって、従来にないサービスを創出する企業も出てきている。前述のスマートコントラクトを載せることによって、大きな利用の可能性の広がりが期待されている。

 まず金融面では、米国のNASDAQが一部の未公開株式の取引用にパイロットシステムを稼働させたほか、スタートアップ企業の投資資金を募り、これを流動化するビジネス(実用例2参照:エストニアのファンダービーム社)や、シェアリングサービスに付随するリスクに対応する保険を提供するビジネス(英国セーフシェアー社)などもスタートしている。さらに、証券分野のポスト・トレード処理(株などの取引が成立した後の事後処理のこと)の効率化などに向けた実証実験が世界各地で行われている(図表2)。

図表2 ブロックチェーンを活用した実施例および実証実験

〈実用例2〉
ファンダービーム社によるスタートアップ企業の投資資金の応募と流動化

 エストニアのファンダービーム社は、2013年にスタートしたベンチャー企業である。同社は、スタートアップ企業に対する投資を募る仕組みをブロックチェーン上で提供している。投資額に応じて独自のトークン(ネットワーク上で使われる一種の仮想通貨のようなもの)を発行し、セカンダリー・マーケット(流通市場)でトークンを売買することも可能、つまり、当該スタートアップ企業が成長し資金を返せる段階(exit)を待たずに、投資資金を流動化して、投資家の間で売買ができる仕組みを実現している。このトークンは、パブリック型ブロックチェーンを活用している。

 また同社は、投資に必要な情報を提供するためのデータバンクとしての役割も果たしている。世界中の15万社を超えるスタートアップ企業のデータ、そしてそれらに出資をする2万を超える投資家の情報などを自動収集し提供(投資家の詳細情報はブロックチェーン外で管理し同社がプライバシー管理を行っている)。全世界的にビジネスを展開しており、日本の投資家も同社を介して、スタートアップ企業への投資を行っている。

 また、ブロックチェーンは、効率的なサプライチェーンの実現やシェアリングサービスの安全な提供など、さまざまな目的を持った多様な企業から関心が持たれている。たとえば、貿易取引については、バークレイズ銀行とイスラエルのスタートアップWaveの取り組みによって貿易取引業務の時間とコストを著しく削減することに成功するなど、貿易関連企業の関心が高まっている(図表2)。また、ダイヤモンドや絵画といった、動産取引にもブロックチェーンは用いられている事例もあり、鑑定情報や取引履歴を安全に保存することが、その財の価値を引き上げることにつながり、革新的なビジネスとなっている(実用例3参照:英国のエバーレッジャー社)。

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