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パクリ商標

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まかり通る「早い者勝ち」 なぜ合法

知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

 商品、サービス、コンテンツのヒットを受けて商標登録を申請したら先を越されていた......。なぜ許されるのか。 有名ブランドをパロディーにしたと思われるあの商標。「ご本家」の無効請求に対し、裁判所が示した判断は? 商標を巡る謎解き。商標を巡る謎解き。今回は、横行する抜け駆け行為に焦点を当てます。

「新しさ問われず」 特許との大きな違い

 新潮社から刊行した拙著『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い? 特許・知財の最新常識』で私は、「アイデアは、人に見せた瞬間に腐る」と書きました。

 ここで言う「アイデア」とは「発明」や「意匠」のことで、「腐る」とは、特許や登録を取るために求められる「出願前の新しさ(新規性)」が一瞬にして吹っ飛んでなくなってしまうことです。

 なぜ新しさが求められるかというと、発明や意匠は「創ったもの」(創作物)、今までになかった新しいものだからこそ、登録の価値があると考えられたからです。どうしてそう考えられたのかというと、「(その権利を)保護してあげますよー」と宣言すれば、新しい発明や意匠を創り出そうとする意欲がわくだろうから、新しいものをどんどん出してもらって、ビジネスを活性化することを期待したからです。

 これに対し、商標には「新しさ」は求められません。商標は創作物ではなく、世の中にある文字や図形などから「選んだもの」(選択物)とされているからです。新しくてはいけないとか古くなくてはいけないと言っているのではありませんが、登録要件としての新しさが求められないことから、出願前に誰もが知っている商標でも、誰かが先に登録していないなどの他の条件が揃えば登録されるという意味です。

 これが、様々な悪意のパクリ商標が大手を振ってまかり通るのを許してしまう原因です。たとえば、任天堂の商標『マリオカート』の略称とされる商標『マリカー』が任天堂以外の企業によって登録されたり、政府と経団連などが推進する『プレミアムフライデー』と同じ商標が第三者によって出願されても違法とは言えない事態が発生してしまうのです。

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