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ブロックチェーンの未来 金融・産業・社会はどう変わるのか

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新ビジネスの可能性広げるブロックチェーンの仕組み

日本総合研究所副理事長 翁百合氏、東京大学大学院教授 柳川範之氏、京都大学公共政策大学院教授 岩下直行氏

 仮想通貨ビットコインには、ブロックチェーンという画期的な技術が用いられている。その適用範囲は仮想通貨にとどまらず、世界のさまざまな企業や金融機関・政府が、この技術による多様なサービスの実証実験を行っている。この連載では、3回にわたってブロックチェーン技術の仕組みや主な種類、用途をまとめよう。第1回はブロックチェーン技術の仕組みについて説明する。

新たなビジネスやデジタルガバメントの可能性が広がる

日本国内でも使えるお店が増えてきた仮想通貨ビットコイン。この通貨を使えば、銀行を介さなくても、個人と個人との間で、低コストで直接送金ができる。国境や為替レートを気にする必要もない。
ダイヤモンド取引の履歴情報がデジタルで管理される新しいビジネスモデルを作り出した英国ベンチャー企業のエバーレッジャー社。ダイヤモンドの透明で信頼できるマーケット形成に役立っている。

 これらには、実はブロックチェーンとよばれる画期的な技術が用いられている。ブロックチェーンは「帳簿のイノベーション」ともいわれる。これまで紙で記録していた取引の履歴情報などがすべて電子的に保管されるようになり、それを関係者が合意の上、分散して保有することが可能となった。その技術は仮想通貨だけにとどまらない。世界のさまざまな企業や金融機関、政府が、この技術を使った多様なサービスの実証実験を行っているのも、新たなビジネスやデジタルガバメントの可能性が広がると考えているからにほかならない。

 たとえば、民間ビジネスでは、電子的に契約を記述した取引情報を取引参加者が分散して持ち合うことにより、付加価値の高いサービスを低コストで提供できる可能性が広がる。また行政においては、公共サービスの手続きがネット上で瞬時に完結することで、私たちの生活が飛躍的に便利になるかもしれない。現在の予想をはるかに超えた、これまでのビジネスの仕組みを大きく変えていく社会インフラとして機能することが期待できる。

 他方、ブロックチェーンの仕組みは複雑で技術的に未熟な部分もあり、慎重論が多く聞かれるのも事実であり、その解決に向け多様な取り組みが世界各国で行われている。

●ブロックチェーンの仕組み:
重要なコンセプトとフィロソフィー

 ブロックチェーンという呼び名は、カネやモノの取引の履歴情報を電子的に記録しながら、そのデータをブロックとして集約、さらに連鎖(チェーン)して組成することに由来している(図表1)。

図表1 ブロックチェーンのイメージ

 ブロックチェーンの利用者は、パソコンや携帯端末などを使い、ブロックチェーンネットワークにアクセスする。幅広く活用されているブロックチェーンネットワークの多くはインターネットが使われている。ブロックチェーンを一言でいうと「取引の履歴情報をブロックチェーンネットワークに参加する全員が相互に分散して保管維持し、参加者がお互い合意をすることで、そのデータの正当性を保証する分散型台帳(Distributed Ledger)」となる。

 以下、もう少し詳しく説明していく。

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