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日産、神戸製鋼...大企業の不祥事を読み解く(後編)

「カビ型不祥事」における第三者委員会の役割

郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

 大企業の不祥事が止まらない。前回は、日産自動車の無資格者検査問題を取り上げて問題の本質を追究した。今回は、同様の観点から神戸製鋼所の問題について考える。

 神戸製鋼の問題は、一部製品について、顧客との契約で取り決めた仕様に適合していないにもかかわらず、データを改ざんし、適合しているかのように装って出荷する行為が、数十年前から組織的に行われていたというものだ。日産の問題と比較してみると、いずれも、時間的な広がりと人的な広がりを持つ「カビ型行為」である点で共通している。

神戸製鋼所は「品質問題調査委員会」の委員長に当初、川崎博也会長兼社長(写真右)が就いた

神戸製鋼所は「品質問題調査委員会」の委員長に当初、川崎博也会長兼社長(写真右)が就いた

 異なるのは、日産の無資格検査問題は、有資格者による完成検査をメーカーに義務付けている道路運送車両法に反するという「法令違反」の問題であり、神戸製鋼の品質データ改ざん問題は、顧客との契約で取り決めた仕様に反するという「契約違反」の問題であるという点だ。

 日産の問題では、一台ごとの完成検査を義務付ける国土交通省の規制が、自動車産業の発展に伴い、製造現場の実態と合わなくなってきていた事情があり、法令の側にも問題があったとの見方もある。

 神戸製鋼の問題でも、不正対象製品の納入先の約9割で最終製品の安全性が確認されていることからもうかがえるように、契約で取り決めた仕様から逸脱し、データ改ざんがされていた製品が、ただちに安全上、品質上の問題を生じさせているわけではない。そもそもの契約上の仕様自体が過剰であった可能性もある。

 そして、これだけ広範囲の多くの製品について顧客側に虚偽のデータが提供されていたことが明らかになったにもかかわらず、顧客の側で「騙されて購入させられた」「虚偽とわかっていたら購入していなかった」という声はほとんど上がっていない。

 神戸製鋼の製品は、当然、競合メーカーとの競争にはさらされていたはずだ。もし、神戸製鋼の製品の品質が他社より劣っており、それをデータの改ざんによって覆い隠していた、ということであれば、顧客は騙されていたことになる。そういう声が上がらないのは、顧客が神戸製鋼の製品を購入していたのは、必ずしもデータだけを信頼していたわけではないからだろう。

 神戸製鋼のような素材メーカーは、一定の品質の原料を調達し、それを確立された工程で製造してきたはずだ。それなりの生産システムや管理体制が確立され、製造プロセスが適切に管理されていれば、完成した製品についても基本的に問題がないだろうという「神戸製鋼製」に対する信頼と、出荷段階でのデータの数字への信頼のいずれが重要なのか。顧客の側の多くが前者に立った考え方をしていることが、現状のような顧客側の対応につながっていると見ることができよう。

 そういう意味では、神戸製鋼の問題も、「情報の記録・保存・開示に関する不正」としてのデータの「改ざん」が大きく取り上げられたが、安全性や品質にかかわる実質的問題があったとは言い難い。

 しかし、その人的、時間的広がりをもった典型的な「カビ型行為」としての「形式上の不正」が、神戸製鋼の事業に広範囲に蔓延していたことが明らかになったことで、社会から厳しい批判・非難を受け、それが全体として同社のダメージがどれだけの大きさになるのかすら見通せない"最悪の企業不祥事"に発展したことは、紛れもない事実である。

 このような問題が発生した経緯と背景・原因を明らかにすることは、今後の同種の企業不祥事への企業の対応を考える上で極めて重要だと言えよう。

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