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「組織IQ」を高めてプロジェクトの失敗を防ごう

マネジメントソリューションズ 横江真由美氏

 前回の記事「失敗を繰り返す組織とどのように向き合うべきか」では、プロジェクトの「振り返り」を確実に行うことが失敗を防ぐ対策として大切であること、併せて「プロジェクト」の視点と「プロジェクトを推進する組織」の視点の2つから課題を洗い出して対応することを提言しました。今回は、「プロジェクトを推進する組織」の視点をさらに突き詰め、「組織IQ」の視点でプロジェクトの失敗を防ぐ対策を解説します。

 昨今、組織の特性・能力、特に「組織IQ」と呼ばれるものがそのままプロジェクトの成否に大きく影響していると感じています。組織IQを簡単に言うと「会社や事業部といった組織におけるコミュニケーションと意思決定の能力」です。

 大規模プロジェクトでは、「プロジェクトチーム=1つの会社や1つの事業部」になりますから、組織IQの高低がプロジェクトの成否にそのまま影響します。また、小規模プロジェクトで少人数のチームを構成した場合も、その「プロジェクトチームの組織IQ」は、チームメンバーが所属する組織のなんらかの特性・能力を受け継いでいます。

 いずれにしても、プロジェクトを成功に導くには、組織IQについて知り、それを高めるようにすることが不可欠です。

メンバーが個人として優秀なだけではうまくいかない!

 なぜ組織IQはプロジェクトの成否を左右するのでしょうか?

 まず、前述のように、組織IQの本質とは、「組織におけるコミュニケーションと意思決定の能力」です。組織を構成する個人のIQとはあまり関係がありません。

 「このプロジェクトでは、社内の優秀な社員を集めたんだけど、意外にうまくいかなかった」「今回のプロジェクトメンバーは全員、プロジェクト経験が豊富なんだけどそれが生かせなかった」――。プロジェクトの振り返りなどで、こうした発言をよく聞きます。これも個人IQ と組織IQは違うことを知っていれば、すぐ理解できます。

 「プロジェクトチーム」の組織IQも、プロジェクトメンバー1人ひとりが持つ個人のIQの合計ではありません。1人ひとりが優秀でも(個人のIQが高くても)、「プロジェクトチーム」という組織が、コミュニケーションと意思決定に関する高い能力を持つかどうかは別ものなのです。

 逆に優秀なメンバーを集めたプロジェクトチームほど、当たり前のこと、普通のことをないがしろにする傾向にあります。特に、組織IQの要素の1つである「コミュニケーション」は代表的でしょう。組織IQが低いプロジェクトチームでは、プロジェクトにおけるコミュニケーション活動が「形式的なイベント」になる傾向があります。

 具体的に、コミュニケーション活動が「形式的なイベント」になっていると感じるのは以下のような場合です。

●メンバーがプロジェクトの目的やゴール、範囲を正しく答えられない
 プロジェクトの目的、ゴール、範囲などは、プロジェクト憲章で明確化しているはずですが、そもそもそれらが文書化されていません。また、プロジェクト憲章を文書化していた場合も、プロジェクトメンバーなどの関係者にプロジェクト憲章の内容が展開されておらず、ゴールや目的などが共通認識化されていません。

 また、プロジェクトの目的などを変更したあと、メンバーに質問すると古い目的などを答える場合も注意が必要です。これは目的などの変更が非公式な雑談で済まされ、明確化・文書化されていないときに発生します。プロジェクトチームの公式なコミュニケーションパスを使用して変更内容が展開されず共通認識化されていない場合にも起こりえます。

●体制図はあるが、個々のタスクを担うチーム間の連携ができない
 プロジェクトの体制図において個々のタスクを担うチーム名が四角の箱で囲まれ、メンバーの名前が入っているだけで、役割と責任が明確化されていない場合によく見られます。結果、各チームは自分たちの役割と責任を勝手に解釈して行動するため、どのチームも対応していないタスクが発生したり、複数のチームが同じタスクを行っていたりします。

●課題をリストにしているが、アクションを実行していない
 課題管理のため、課題を定期的に集約してリストにしてありますが、そのリストに記述された個々の課題に対するアクションが実行されないことがあります。実際に、課題リストを関係者が眺めるだけになる会議を毎週繰り返すプロジェクトをいくつか経験しました。

 これは課題の文書化は行われているのですが、リストにまとめた課題の内容が主観的・曖昧で、事実をもとに課題が明確化されていないときによく見られます。課題自体が曖昧であれば、誰が、いつまでに、どのように対応すべきなのかについても明確化することは困難です。結果、課題についての会議を重ねても、関係者による共通認識化が進まず、いつまでも対応できない状況でいるのです。

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