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英国海兵隊に学ぶリスクマネジメント

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北朝鮮ミサイル飛来 その時わが社は

マッキニーロジャーズ アジア太平洋代表パートナー 岩本仁氏

「自由と制約」 戦場を生き抜く知恵

先陣を切って敵地に踏み込む部隊は常に想定外の事態を覚悟している 先陣を切って敵地に踏み込む部隊は常に想定外の事態を覚悟している

 上陸地点はイラクとイランの国境に近い。ひょっとしたら自分たちが気付かないうちにイラン側に入ってしまったのかもしれない。この危機はイラク軍に遭遇した場合よりも深刻だった。なぜならリチャードたちは上官から厳命を受けていた。「イランに向けて撃ってはいけない」。イランと交戦すれば影響は全軍に、更には世界情勢に及びかねない。現場指揮官の肩にいきなり重圧がのしかかった。

 しかし、リチャードは動じなかった。状況を把握して部下に指示を出し、速やかにイラン軍の射程外へ退避。応戦してはいけないという絶対的な条件を破ることなく、作戦を中止することもなく、イラク領への上陸を成功させた。

 以上は多くの戦場で起こりうる事態の一端だが、企業のリスクマネジメントにとっても有効な教訓を含んでいる。ビジネスに置き換えて考えてみよう。

 まずリチャードが遭遇した「イランの砲撃」は想定外の敵(あるいは敵になる可能性がある第三者)の出現を意味する。ビジネスの世界でもよくあることだ。

 例えば、とある企業が同業他社との経営統合交渉を進め、統合条件などが固まってきた矢先に、当初は追認していた創業家が突然反旗を翻す。統合相手との厳しい交渉が続く中、大株主を説得しなければならないという新たなタスクが加わる......。

 震災や大水害を受け、被災地の拠点や事業を再建しようと奮闘している際にも想定外の困難は発生する。しかし、先のリチャード率いる英国海兵隊部隊のように乗り越えることはできるのだ。その際に役立つのが軍隊式の思考法だ。

 その思考は、一言で表すなら「自由と制約」である。何が自由で何が制約か、明確に線引きする。ここを起点にベストの解決策を短時間で考える。このように言葉にすれば簡単そうだが、状況が刻一刻と変化し死のリスクに直面する戦場で、この冷静さを保つこためには相当な鍛錬が必要だ。

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