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英国海兵隊に学ぶリスクマネジメント

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北朝鮮ミサイル飛来 その時わが社は

マッキニーロジャーズ アジア太平洋代表パートナー 岩本仁氏

供給停止、顧客への通知...難しい判断を迅速に

 危機発生時の責任者の明確化は、首脳陣が大局的な判断を下す上でも役立つ。危機によって社内のどの部門にどのような問題が起きているのか、責任者からの報告で把握できるからだ。危機を受けた製品の供給停止や顧客への通知といった経営判断は一刻を争う。その時に至って「現場の責任者は誰だ」「責任者と連絡が取れない」では済まされないのである。

 危機発生時の責任者をどの階層のレベルまで配置するかは、企業の規模によって差が出てくる。ただ、一般的に考えて大企業なら部のレベルまで考慮しておくべきだろう。

 以上の様な訓練は、ほんの入り口に過ぎない。導入している企業は日本国内にもあるが、トップの強いリーダーシップが導いたケースなどで、まだ一部に限られている。従って、企業の中から参考になる事例を探そうとしても大変だろう。一方で、ここまで述べてきたような訓練を欠かさず、常に想定外の危機に対処している組織が世界にはある。それが軍隊だ。

 私がパートナーとして参画する経営コンサルティング、英マッキニーロジャーズでは、英国海兵隊をはじめとする英国軍部隊や米軍などで実戦を経験した元軍人が、コンサルタントとして企業の組織改革やリスクマネジメントを手助けしている。いわば戦場の経験と知恵をビジネスの課題解決に応用しているのだ。

 軍隊のリスクマネジメント手法とは一体どのようなものか。ここで一つ、私の友人でマッキニーロジャーズにも在席していた元英国海兵隊将校、リチャード・ワッツから聞いた、ある作戦の話を例にしてみたい。

 2003年のイラク戦争でのことだ。リチャードの部隊はサウジアラビアの基地で作戦に備えていた。「24時間以内に出発できる準備を整えよ」。ある日、米英の先発部隊の一部としてイラク国内に侵攻する命令を受けた。

 作戦の目的や詳しい内容は今でも教えてくれない。除隊後も機密や戦死した仲間に関する情報には硬く口を閉ざす。元軍人としてのモラルとプライドが彼をそうさせている。

 部隊はサウジからペルシャ湾を経てイラクに上陸しようとしていた。リチャードはその時に起きた想定外の危機を鮮明に語る。「突然砲撃された。それもとんでもない方向から。撃ってきたのはイラン軍だ」

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