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FIN/SUM WEEK 2017 レビュー

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フィンテックは日本の4つの難問にどう答えるか?

FIN/SUM WEEK 2017 クロスボーダートークより

4.財政・保険・税収

 最後の第4セッションでは、櫛田健児(米スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員、写真は左から3人目)、岩田太地(NEC Fintech 事業開発室長、写真は右端)、信岡良彦(エヌエヌ生命保険=東京・千代田=経営企画部長、写真は右から3人目)、高梨佑太(金融庁総務企画局企画課信用制度参事官室課長補佐、写真は右から2人目)、柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授、写真は左から2人目)の5氏が登壇し、「財政・保険・税収」をテーマに幅広く意見を交わした。登壇者の発言要旨は以下のとおり。

データ活用・保護の高度化、医療・保険効率化、行革の刺激に期待

●「革命」の本質は情報処理能力の豊富化
櫛田健児氏(米スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員)
 現在起こっている「革命」の本質は、かつては希少な資源だったコンピューターの処理能力と情報蓄積能力が、いまや豊富な資源になったことにある。この豊富な資源を使って、破壊的なフィンテック企業は皆が今までできなかったこと、想像できなかったことを実現している。限界を決めるのはコストではなく、創造性だ。

 フィンテック企業の成長余地が大きいマクロ的な理由として、ベビーブーマー(団塊の世代)の高齢化が挙げられる。介護や相続といったペインポイント(痛点=顧客にとっての悩みの種)に対して、データ活用によって解決法を見いだし、テクノロジーで市場を広げていくことができるだろう。

●レグテックやデータ保護サービスに活路
岩田太地氏(NEC Fintech 事業開発室長)
 新しい感覚を持つ起業家が、既存の大企業では作れない価値を事業化するとき、NECのような会社の役割とは何なのだろうとずっと考えている。公平な競争をできる場をテクノロジーで支える「レグテック」(技術による金融規制の管理)などがひとつの解かなと思って試行錯誤している。

 エストニアの電子政府などに関連して最近考えるのは、欧州連合(EU)が個人情報保護を基本的権利としてとらえていること。そこまでいって、そのうえでテクノロジーを今後どうインプリ(実装)していくかを考えなければいけないと思う。我々は本気でデータプロテクションについてサービスをやりたいと考えている。

●ビッグデータ活用し保険をパーソナライズ
信岡良彦氏(エヌエヌ生命保険経営企画部長)
 ビッグデータ活用の本丸は保険だと思っている。今はまだ画一的に万人受けするような商品を各社が横並びで展開しているが、健康状態、金融資産、家族構成、行動履歴などを元に、多様化する価値観、ライフスタイルに対応してパーソナライズされたサービスを提供していくことが今後可能になる。

 保険商品の検討、加入、支払いといった各段階でユーザーエクスペリエンスを高めることはいくらでもできる。我々も積極的に研究していきながら日本のインステック(保険版フィンテック)を引っ張っていきたいと考えている。

●ビットコインの無政府性が行革の刺激に
高梨佑太氏(金融庁総務企画局企画課信用制度参事官室課長補佐)
 銀行というレガシーの塊のような組織がデジタルマネーなど新しいものに取り組んでいるのは興味深い。自分たちがリプレース(代替)されるという危機感があるのではないか。役所はリプレースされないというのが、改革の意識に対してとてもマイナスだと思う。リプレースできない組織を、徐々に方向転換していくというのは実は結構難しい。

 個人的には、無政府でも動くというビットコインの仕組みは非常に興味がある。国のような仕組みを無政府のなかから作り上げるといった思想があって、それが政府をリプレースする脅威に将来なりうるとしたら、政府にとっていい具合にプレッシャーになるかもしれない。

●電子政府のメリット「見える化」が重要
柳川範之氏(東京大学大学院経済学研究科教授)
 政府の電子化にあたって「プライバシーが大事」という声が強いのは、データ活用による具体的なメリットが目の前に見えていないからだ。ビジネスの場合は、ベンチャーが現れて大企業と違うサービスを示すことができる。ところが、政府のサービスの場合はベンチャーがない。だからこそ、学者としては、エストニアや規制特区のような話をして、見えていないがメリットがあることを言い続けないといけないと思っている。

 フィンテックは高齢者医療や保険の効率化をもたらす可能性がある。社会保障は日本の財政上の大きな課題となっており、フィンテックを通じた取り組みが財政改善につながっていくことに期待している。

(日本経済新聞社 FIN/SUM事務局)

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