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FIN/SUM WEEK 2017 レビュー

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フィンテックは日本の4つの難問にどう答えるか?

FIN/SUM WEEK 2017 クロスボーダートークより

3.デジタルデバイド・格差

 第3セッションでは、MITメディアラボ所長補佐でクリエーターとして活躍するロフトワーク(東京・渋谷)の林千晶代表取締役(写真は右から2人目)、「EdTech(エデュテック)」など教育イノベーションの専門家であるデジタルハリウッド大学大学院(東京・千代田区)の佐藤昌宏教授(写真は左から2人目)、電子決済などを手がけるITベンチャー、BASE(東京・渋谷)の鶴岡裕太代表取締役CEO(写真は左から3人目)、日本経済新聞社の滝田洋一編集委員(写真は右端)の4氏が登壇し、「デジタルデバイド・格差」をテーマに議論を交わした。各登壇者の発言要旨は以下のとおり(敬称略)。

働き方・生き方を変える技術、教育革新にも取り組め

●生き方変えるテクノロジー~多様性受け入れる技術、能動的な「差」生む
林千晶氏(ロフトワーク代表取締役)
 フィンテックによって、金融機関から相手にされてこなかった中流層が資産形成をしたり、小規模ネット企業が簡単に与信審査・融資を受けたりできるようになれば格差解消といえる。ただ、テクノロジーがたとえばAR(拡張現実)なら風俗系ジャンルが先行し、自動運転なら情事抜きで議論が進みにくいように、表舞台に出ないところに格差問題の本質が横たわっているのではないか。

 インターネットやフィンテックの大きな流れは同質性ではなく多様性を受け入れる技術、仕組みの構築といえる。格差が必然的に環境の中に生まれ、個人の意思では変えられず、そこに嫉妬と不幸を感じるなら、テクノロジーはひとの生き方を変えてくれるだろう。テクノロジーのサポートによって、能動的に選んだ「差」は「生き方」の差だからだ。年収ではなく、地域なのか世界なのか、生きる環境を選んでいることになる。

●グローバル競争に勝つには「上位層」伸ばせ~教育革新へイノベーター育成も課題
佐藤昌宏氏(デジタルハリウッド大学大学院教授)
 この国は齢(とし)を取りすぎた。教育やテクノロジーではなく、選挙票につながる年金や医療に力が注がれる。その事実を受け入れたうえでイノベーションをどう起こすか。グローバルリーダーを育てていくうえで、一番危機を感じるのは伸ばせる上位層が押さえられ、伸びていないところにある。教育においてはモチベーションの高い子供はパソコンとネットさえあればどんどん伸びるのに、1クラス40人の枠に入れるので頭打ちになってしまう。

 11月にエデュテックのグローバルカンファレンスを開く。X-テックは先生や学校の仕組みや役割をも変えてしまうだろう。教育革新と同時にその担い手である教育イノベーターを増やすことも必要だ。スタートアップ時の小さな動きが大きなうねりになるまでの時間は毎年短くなっており、早期に制度革新に取り組まないとグローバル競争に勝てない。

●「自分ではなく他人の生きがい」がビジネスの前提~テクノロジーあるべき姿に
鶴岡裕太氏(BASE代表取締役CEO)
 いまのウェブサービスを作っている現場は20代が大半だが、「絶望」という感覚を味わっていない。親の蒸発とか自己破産とかを理由に何とか生きていくためにサービスを始めたわけではない。コンプレックスのない人が強い時代になったといえる。自分の生きがいのために仕事をする時代ではなく、他人の生きがいを作るために働くのがスタンダードになった。ビジネスの前提条件が変わったのだ。自分たちがこうしたいのではなくユーザーがこうしたいから作ってあげるという発想がないと生き残れない時代になると思う。

 価値の在り方、テクノロジーの発展はあるべき姿に不可逆的に進むだろう。日本だけしか使わないおカネ、特定の国しか使えないおカネはなくなっていくと思う。

●ツイートで浮かび上がったフィンテックと働き方への関心~主戦場はリアルデータに
滝田洋一(日本経済新聞社編集委員)
 「三菱UFJ、9500人の仕事自動化」の記事と、「プライマリーバランス」の記事をツイートしたところ、前者に圧倒的な関心が集まった。フィンテック革命によって働き方がどう変わるか――多くの人々が問題意識を共有していることが浮かび上がったといえる。安倍政権支持率も一般的なイメージとは逆に若年層が高い支持率を示す一方、高齢者層が3割台と低調だった。20代などの雇用が安定している一方、現役時と定年後の労働格差がとても大きくなっており、高齢者活躍という掛け声とは裏腹に政府、企業や社会が対応できていない。

 プラットフォームとコンテンツは重要なテーマで、いま一番ギラギラした戦いはリアルデータだと思う。取引や健康情報など(実社会)のデータがあれば商品やサービスの組成に直結する。その価値に気付かずに(海外勢など)外部に吸われているというのであれば戦略性をもっと考えていくべきだし、個々の企業で対応できないなら行政などと連携していくことが競争力を高めるうえでも有益だと考える。

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