日本経済新聞 関連サイト

FIN/SUM WEEK 2017 レビュー

記事一覧

フィンテックは日本の4つの難問にどう答えるか?

FIN/SUM WEEK 2017 クロスボーダートークより

2.人手不足・宅配クライシス

 フィンテック・クロスボーダートークの第2セッションは「人手不足・宅配クライシス」がテーマ。橋本恵一郎(国土交通省自動車局貨物課課長補佐、写真は左から2人目)、竹本国夫(VentureGate=東京・渋谷区=代表取締役、写真は右から2人目)、木村恭子(日本経済新聞社編集委員、写真は右端)、堺美夫(三菱地所ビル営業部統括、写真は右から3人目)の4氏がパネリストを務め、宅配ビジネスの深刻な人手不足を前向きに乗り越える道を探った。各氏の発言要旨は以下のとおり。

荷主の協力の確保、事業者のまとめ上げやサービス有料化を

●荷主の協力を得る環境の醸成が必要
橋本恵一郎氏(国土交通省自動車局貨物課課長補佐)
 トラック業界は現在、事業者数約6万2000、従業員数約188万人で、国内輸送の約4割を担う。有効求人倍率は2.4倍に達し、人が足りていない。背景は長時間労働。荷物の積み下ろしの間に運転手が待機する荷待ちは平均2時間かかる。運送以外の仕事に時間を取られており、荷主の協力を得る環境を醸成していく。宅配は昨年、40億個を超えた。再配達が2割生じており、消費者の協力を得ていきたい。

 行政としても問題解決に取り組んでいる。一例は貨客混載。一定の安全基準を満たしたうえで、バスやタクシー、トラックが旅客と貨物の運送を兼ねることができるようにした。自動運転で最初のトラックを人が運転し、残り2台を無人とする隊列走行の実証実験も行う計画だ。また、荷主の理解を深めるためにも、運賃・料金を決める際の規定に待機時間や荷物の積み込みを加え、運賃・料金の適正な収受を促したい。

 シェアリングエコノミーの流れは強いと感じる。行政としては安全面を最優先としつつ、規制のあり方についてしっかり考えていきたい。

●物流業者のロールアップ(まとめ上げ)を提案
竹本国夫氏(VentureGate代表取締役)
 投資ファンド運用の経験から提案したいのは、物流業者のロールアップ(まとめ上げ)。多くの会社を集めて一つの固まりにすれば、固定費を下げ、交渉力を上げることができる。

 問題解決の一つのカギとなるのは量子コンピューター。(膨大な計算を必要とする)最適化問題に向いている。独自動車大手フォルクスワーゲンは量子コンピューターを使い、北京を走る約1万台のタクシーから収集したデータをもとに、渋滞にならない都市交通を研究している。量子コンピューターを使った配送システムが実用化できれば、宅配のアルバイトを今からできますという人がいた場合、最適ルートを瞬時に計算し、駅前のスーパーで荷物を10個くらい受け取って配るといったこともできるだろう。

 不動産投資の対象としてコインランドリー、コンテナ製の貸し倉庫は人気があるが、宅配ロッカーも投資商品になりうる。アマゾンなど通販会社やヤマト運輸など運送業者から収入の一部を分けてもらい、ビジネスとして成り立たせることがポイントだ。

●サービスはタダという考えを改めないと...
木村恭子(日本経済新聞社編集委員)
 今年3月、日経電子版のクイックVote(ウェブ投票)で、ヤマト運輸が、深刻化する人手不足対策として宅配便の引き受けを抑える検討に入ったことに対し、意見を募ったところ、4000人近い読者が回答してくれた。再配達についての改善策は「有料のオプションにする」という意見が約4割を占め、最も多かった。さらに、商品の当日・翌日配送サービスについては、もともと必要としていない人が5割近くに達し、料金が上がったら不必要という人も3割近くを占めた。

 利用者の立場でいうと、自宅のマンションの近くに宅配便の配送所があり、配送スタッフが何度も訪ねて来てくれるのに、なかなか受け取れないことがある。会社の終わった人が副収入を稼ぐ手段として配れるような、規制緩和があればいい。地方の場合、ガソリンスタンドが業種転換を含め、配送センターを事業として行ったらどうかとの意見を聞く。

 即日配送を希望する人には料金を引き上げるといった対応が必要。サービスはタダという考えを改めないと、デフレ圧力がまた強まりかねない。

●街を実験場にして社会を便利にする試みを始めたい
堺美夫氏(三菱地所ビル営業部統括)
 働き方改革をきっかけに、宅配便を従業員がオフィスで受け取れる会社も増え始めている。便利な方向に行けば人は動くし、システムも変わる。価値のあるサービスであれば課金もできるはず。街を実験場にして社会を便利にする試みを始めていきたい。

 東京・丸の内は大きな配送トラックが走っていない。まず荷物を地下に集めて、そこから効率的に配送している。同様のやり方が住宅地でもできるのではないか。規制緩和でシェアリングエコノミーによる配送が発達すれば、住居に近い配送センターから荷物を届けられる。クリニックのように特定の目的がある施設は、奥まった場所でも成り立つ。宅配センターも人々が目的を持っていく場所だから、不動産投資の対象として考えた場合、良い投資になる可能性はある。

 当社が所有する大手町ビルに入居している東大発ベンチャー、プリファード・ネットワークスは人工知能(AI)技術を使い、米アマゾン・ドット・コム主催のピッキング(荷物取り出し)コンテストで上位に入った。テクノロジーが何かを変えうる流れの一例だと思う。

PICKUP[PR]