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FIN/SUM WEEK 2017 レビュー

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フィンテックは日本の4つの難問にどう答えるか?

FIN/SUM WEEK 2017 クロスボーダートークより

1.農業と地方創生

 フィンテック・クロスボーダートークの第1セッションは「農業と地方創生」がテーマ。菊池紳(プラネット・テーブル=東京・渋谷=代表取締役創業者、写真は右から3人目)、栗田紘(seak=東京・港=代表取締役社長、写真は右から2人目)、松本武(ファーム・アライアンス・マネジメント=東京・千代田=代表取締役、写真は右端)の3氏がパネリストとして登壇し、議論を交わした。各氏の発言要旨は以下のとおり。

既存の線上に日本の農業はない、フィンテックで脱皮を

●収益ベースの融資に脱皮を
菊池紳氏(プラネット・テーブル代表取締役創業者)
 大量生産・大量供給と青果市場での値決め・流通といったこれまでの仕組みが悪いのではなく、時代の変化に合わずに古くなったところに日本の農業の問題がある。土地(農地)と人(生産者)が結び付けられた従来の農業の仕組みでは、変わることは容易ではない。そこに先端テクノロジーを使って、変化の速度を上げることを考えている。

 農業経営には早く売り上げを回収したい時期があり、そのために生産物を早く、確実に収益に変える仕組みが必要だ。その人が何をしたいのかでファイナンスはいくらでも設計できるものだ。財務諸表でカネを貸すのではなく、収益ベース(見込み)でカネを貸す仕組みに農業もならなければならない。そのためには、農家は相場に売り上げを左右される市場取引ではなく、売り上げ見込みを立てられる直接取引を重視し、そうした農家の取り組みを支える金融が必要だ。

 農業に関わると所得が低いというイメージがあるが、これはウソだ。農業で働くパート従業員の時給は高い。経営が苦しい農家がいるのは事実だが、それはどうやって高い収入を得るかというデザインがないからだ。高収入を得るために適した土地で適した作物をデザインしていく。これからは小規模でもうまく回っていく農家をつくっていくのが理想ではないか。

 農業とフィンテックの分野は新しいモデルがまだまだ出てきそうだ。対象が農家なのか生産者支援なのかで中身は変わるが、資金流入が潤沢になることで、農業全体の技術が進むと思っている。

●破壊的な手法が必要
栗田紘氏(seak代表取締役社長)
 神奈川県が優秀なトマト農家が目指す時給の目安として「430円」を掲げているが、ここに現在の日本農業の本質が表れている。なぜこんな低い時給になってしまうのか、ネガティブな要素は何か。低い時給を改善するには破壊的な考え方や手法が必要で、アグリテック(農業と技術の融合)を目指す人たちでさえ目線が低すぎると思う。

 日本ではもっと農業の寡占化が進むべきだ。大規模な専業農家ならば国内・海外に農地を持ち、高度な技術で付加価値の高い情報にアクセスできるが、兼業農家ではそうはいかないだろう。人手不足による働き手の確保難や配送料の上昇などの要素も考えると、厳しい環境でも生き残れる筋肉質の専業農家を育成すべきだろう。

 私たちは耕作放棄地を借りて農業経験のない人が従事する形態を進めており、その方が利益を出している。農業への取り組み方の点で、経験者よりも未経験者の方が新しい取り組みをやりやすい面がある。

 農業フランチャイズとして成長していくには、農地・圃場で何が起きているのかのデータを持続的に追っていくことが重要だ。農業は環境のほかに従事者という人の要素もあるので、自分たちだけでやっていけるとは思っていない。いろいろな人と連携していく。技術のトレンドの変化にも柔軟に対応できるようにしている。

 既存の線上に日本の農業はなく、がらりと変わるのではないか。そしてフィンテックなどとコラボレーションすることで、面白い日本が見えてきそうだ。

●農業とフィンテックは重要なパートナー
松本武氏(ファーム・アライアンス・マネジメント代表取締役)
 農業生産の課題を現場から捉えている人は、とりわけ行政にはいないのではないか。極端に言えば、既存の日本農業の仕組みは全て焼き払えばよいとまで感じている。

 農家の財務諸表だけで融資する旧来型の資金調達はもう限界だ。農業も資金調達手法が変わり、それによって農業情報管理システムを整備できれば、農家は自分たちの夢の実現に近づける。そうした兆しは出てきている。

 時給の低さは、農業は無駄なことに時間を費やしているとみることもできる。労働を効率化し生産性を上げていけば、時給を上げられる余地はありそうだ。時給の安さだけが原因ではないが、農業の担い手はこれから予想以上に減っていく。我々のシミュレーションによると、現在200万人の農業従事者は2030~35年には150万人に減少する。農業で家計収入の半分以上を得ている主業農家の数は現在29万軒だが、これも年に1万軒ずつ減っていく。農業の将来を考えるには、農家を育てるという視点も要る。

 後継者難・担い手不足の対策には、フラストレーションを抱える若者に将来ビジョンをどう描かせるかが必要だ。私たちはそのためのツールを提供する。きつい言い方になるが、日本の農業が後継者難になっているのは社会に必要とされていないからだ。必要とされるために何をすべきかを考えなければならない。

 農業は確実に変わっていく。変わるためには資金が必要だ。農業革命を起こすためにも、農業とフィンテックは重要なパートナーだと思っている。

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