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営業力 100本ノック

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デキる営業が相手を動かす話しをする秘密

東京工業大学大学院特任教授、レジェンダ・コーポレーション 取締役 北澤 孝太郎氏

4.意表を突く質問をされるのはどうしてか知っていますか

●悪意の質問には、まず落ち着く

 相手が意表を突く質問をしてくるのは、すでに答えを用意し、その答えに沿うような回答をしてほしいためということが多くあります。それが善意の場合であればうれしいのですが、悪意であれば大変です。そのときあわてて答えたことが、既成事実として成立してしまいます。あなたが慎重に条件をつけて話したとしても、それはカットされ、相手にとって必要な言葉だけが事実として成立することだってあるのです。

 昔、競合を推している担当者が「これ以上の条件交渉はできないのですね」と質問してきました。それまで、さんざん値引き交渉に応えてきた私は、条件交渉=値引き交渉と思い、「もうこれ以上はできません」と答えました。結局その商談は、競合に持っていかれたのですが、後でその担当者の上司から、稟議書に納期・支払い条件など条件交渉一切不可とあったので競合にしたという理由を教えてもらいました。そんなことはいってないと申し開きしましたが、すでに後の祭りでした。このような悪意に対応するには、2つの方法があります。1つは、その質問の意図を慎重に確認することです。「これ以上の条件交渉とはどんな意味でしょう?」と聞く余裕があれば、悪意のある質問はかわせたはずです。

●質問が出るタイミングで1つのキーメッセージを準備する

 もう1つは、あらかじめ答えることを決めておくことです。それを質問に対するキーメッセージといいます。まず、あなたの方針が必要です。それから、相手が直面する課題に触れます。そしてそれを解決する策を提示します。最後に、あなたがやるべきこと、つまり約束を話します。

 例えば、どんな突拍子もない質問がきても、まず、「私は、貴社と何としてもおつき合いしたいと思っています」「それには担当者様の納得が一番大事です」「担当者様が納得されるまで、条件についてはうかがいます」「それができるかできないかは、上司に確認して1日以内にお答えします」と用意したキーメッセージで答え、今回の場合は、「条件交渉とはどんなことをいっておられるのでしょうか」と返すのです。そうすれば、どんな想定外の質問にも、少しばかり余裕を持って対応することが可能となります。顧客や社内で重要な案件を通す場合のプレゼンテーションの場などでは、その場に必ず一人や二人反対者がいるものです。そんなときも、あわてずこの方法を用いて乗り切ってください。

北澤 孝太郎 著 『営業力 100本ノック』(日本経済新聞出版社、2017年)、第8章「[人を動かす]メッセージとコミュニケーション」から

北澤 孝太郎(きたざわ・こうたろう)

東京工業大学大学院特任教授、レジェンダ・コーポレーション取締役
1962年京都市生まれ。1985年、神戸大学経営学部卒業後、リクルートに入社。20年にわたり営業の最前線で活躍。2005年、日本テレコム(現ソフトバンク)に転身。執行役員法人営業本部長、音声事業本部長などを歴任。その後、モバイルコンビニ社長、丸善執行役員などを経て、現職。東京工業大学ではMBA科目の「営業戦略・組織」を担当。著書に『営業部はバカなのか』(新潮新書)、『優れた営業リーダーの教科書』(東洋経済新報社)、『人材が育つ営業現場の共通点』(PHP研究所)がある。

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北澤 孝太郎 著
出版:日本経済新聞出版社
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