日本経済新聞 関連サイト

勝ち抜く中小経営への強化書

記事一覧

越境ECの可能性とリスク

日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員 竹内 英二氏

 国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表した「日本の将来推計人口(中位推計)」によると、2015年に1億2,709万人だった日本の人口は、2040年には1億1,374万人に10.5%も減少します。年齢別にみると、同期間に「65歳以上」は18.8%増えますが、「15~64歳」は21.3%、「14歳以下」は14.0%、それぞれ減少します。医療や介護など高齢者に関連した市場を除き、これからは国内の多くの市場が縮小していきます。製造業でも小売業でも、日本人だけを対象に商売をしていたのでは、経営が成り立たなくなるかもしれないのです。

 一方、海外には米国やアジア諸国など、人口が増加し、市場の拡大が見込まれる国がたくさんあります。増加する海外の需要を獲得することができれば、人口の減少に伴う市場の縮小をカバーすることができます。その方法の一つが「越境EC」です。

成長する越境EC市場

 越境ECとは、インターネットを使って海外の企業や消費者に直接販売する電子商取引(Electronic Commerce)のことです。ECは大きく、企業向けと消費者向けとに分けられますが、本稿では消費者向けの越境ECについて取り上げます。

 経済産業省の「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備」によると、消費者向けの越境EC市場は急速に拡大しています(図)。日本から米国への販売額は2012年には385億円しかありませんでしたが、2016年には6,156億円と16倍になっています。同じ期間に日本から中国への販売額は、1,199億円から1兆366億円へと8.6倍に増加しています。

日・米・中の越境EC市場 (資料)経済産業省「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備」 (資料)経済産業省「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備」

 もちろん、日本の越境ECだけが成長しているわけではなく、米国から中国への販売額も、2012年の1,669億円から1兆1,134億円へと6.7倍に増えています。また、中国から米国への販売額も同期間に11.4倍に伸びています。越境EC市場は世界的に拡大しているのです。なお、図には掲載していませんが、日本が2016年に越境ECを通じて購入した金額は、米国からが2,170億円、中国からが226億円ですから、越境ECに関しては大幅な貿易黒字になっています。

 越境ECが成長している理由としては、インターネットの利用者が世界的に増加していることが挙げられます。とくに近年は1万円前後で買える格安のスマートフォンが登場し、途上国を中心にシェアを伸ばしています。パソコンは高くて買えなかった消費者でも、格安スマホの登場でインターネットを気軽に利用できるようになったのです。

PICKUP[PR]