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パクリ商標

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御社の商標、パクられていませんか

知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

商品・サービスとペアが条件

 商標の定義について申し上げたかったのは、商標法の定義は世の中にあるすべての商標をカバーするものではないということです。このことは、ともすると専門家も勘違いしています。目からウロコが落ちましたでしょうか?

 たとえば「ABC」という商標を登録した人から、「ABCと書かれたインターネットサイトがある。これは私の商標権の侵害ですよね」というタイプの問い合わせを受けることが、本当によくあります。

 この点について説明しますと、まず、商標が商品やサービスを見分けるためのサインであることを本章の最初のところで申し上げました。このことに関連して、商標登録というものは、出願人で決めた商標と商品(指定商品)、同じく商標とサービス(指定役務)が常にペアになって行われます。

 そこで、先のような問い合せに対し私は、次のように答えます。「インターネットサイトで使われている商標は、なるほど登録商標『ABC』と同じですね。でも、あなたの登録商標の指定商品は『〇〇〇』で、インターネットサイトは『△△△』のサービスを提供するためのものだから、違いますよね。だから、商標権の侵害にはなりません。侵害にならないということは、サービス『△△△』について商標『ABC』が他人に商標登録されることもあります」と。

 たとえば、ネット通販の『AMAZON』の登録商標(登録第4886896号、指定役務:他人の商品の販売事務の代行ほか)に対し、別の会社が『AMAZON/アマゾン』の登録商標(商標登録第3286863号、指定商品:宿泊施設の提供ほか)を持っているのが、その一例です。

 このように商標というものは、いつも指定商品や指定役務とペアを組んでいなければならないのです。いわば、商標と指定商品や指定役務は夫婦のようなもの。仮面夫婦であっても、別居していなければいい。独り歩きしたら商標権を主張のできないことを理解しておいてください。

新井 信昭 著 『パクリ商標』(日本経済新聞出版社、2017年)「Ⅰ そもそも商標って何?」から

新井 信昭(あらい・のぶあき)

知財コミュニケーション研究所代表、新井・橋本・保坂国際特許事務所パートナー
1954年生まれ。知財コンサル3000件超の知財活用コンサルタント、博士(工学)、技術経営修士(MOT)、弁理士。高卒後、新聞配達やタクシー運転手などで貯めた資金で世界一周の旅に出るなどユニークな経歴を持つ。著書に『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』。

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