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パクリ商標

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御社の商標、パクられていませんか

知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

「ファイト-」「イッパーツ」あのCM音声も

 ビジネスのやり方も時代によって変わりますので、その変化に対応するためにはどのような商標をどのように保護すべきか、保護が必要であっても審査できなければ元も子もないので審査する技術や資料は十分なレベルか、というようなことを考えながら審議案を作っていきます。

 これまでの商標の保護範囲の変わりようを、時代背景と合わせて簡単に説明します。マラソン銅メダルの有森裕子さんが「自分で自分をほめたい」と言ったアトランタオリンピックは、1996年の開催。その年に「立体形状」が登録対象に加えられました。立体形状の商標の登録例として、プロ野球の楽天イーグルスのマスコット人形『クラッチ』や、スポーツカーの『フェラーリ』のボディなどがあります。

 立体形状が加えられた18年後となる2014年。フィギュアスケートの羽生結弦さんが金メダルに輝いたソチオリンピックの開催年です。この年に、「音、動き、位置、ホログラム、色彩」に関する新しいタイプの商標の登録ができるようになりました。たとえば、『HI・SA・MI・TSU』のメロディーが「音商標」です。消炎鎮痛剤として有名な『サロンパス』で知られている久光製薬ですが、肩こり症の私は、これを聞くと、思わずサロンパスを貼りたくなってしまいます。

音、動き、位置、ホログラムなども認められるようになった(久光が申請した音商標の五線譜) 音、動き、位置、ホログラムなども認められるようになった(久光が申請した音商標の五線譜)

 ところで、商標登録出願とは、「この商標を登録してくれ」という意思表示ですから、登録しようとする商標を特定しなければなりません。音商標を出願するとき、どうやって商標を特定するのかご存知でしょうか?

 文字や図形などの商標は紙に印刷できますから、難しくありません。立体的商標は、正面や背面などから見た絵や写真などを複数枚で示して特定します。

 実務に関わっている読者ならご存知のことですが、音商標では、文字または五線譜等で表してメロディーを録音したCDなどを添付することになっています。このメロディーなら、オタマジャクシ(音符のこと)を読めない人でも、どんなメロディーかわかりそうですね。

 もう一つご紹介します。

 音商標の登録のなかに、文字で特定されたものがあります(登録第5804565号)。出願人は、大正製薬株式会社です。説明なしで引用します。

 「本商標は、『ファイトー』と聞こえた後に、『イッパーツ』と聞こえる構成となっており、全体で約5秒間の長さである。」

 また、音商標以外の商標としては、アートネイチャーの増毛の動きが「動き商標」として、エドウィンのジーンズの尻ポケット横の赤いタグが「位置商標」として、JCBカードで地球の裏から現れる太陽光が「ホログラム商標」として、セブン― イレブンの白地に橙、緑、赤の三本の横縞ラインの看板が「色彩商標」として、それぞれ登録されています。

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