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パクリ商標

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御社の商標、パクられていませんか

知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

定義による勘違い 商標法と世間のズレ

 繰り返しますが、「商標」とは、商品やサービスを見分けるためのサインです。まだわかりづらいと思われる方のために、別の言葉に言い換えましょう。今は商標よりも広い意味で使われていますが、理解のためにざっくりと言うなら、「ブランド」のことです。ちなみにブランドは、牧場の所有者が他人の家畜と区別するために自分の家畜につけた焼印から始まった言葉です。

 商標というものが何であるかをわかっていただいたところで、世の中で誤解されやすい点について説明しておきます。それは、商標の定義についてです。最近は、ピコ太郎さんの『PPAP』や、経済産業省の『プレミアムフライデー』という商標の第三者による抜け駆け出願が相次いで報道されました。そのためか、商標に対する関心が今までになく高まっているように思います。詳しく知りたくなった人は、インターネットで検索したり、「商標法」の解説本を読んだりされたことと思います。

 こうした記事や解説の中に必ず出てくるのは、「商標の定義」です。それによれば、以下のような説明がされています。

 「この法律で『商標』とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」と言う)......」(傍点筆者)

 「この法律で」と書いてあるこの法律とは「商標法」のことです。だから、この定義は、「商標法」が適用されるエリアの中にいる限り正しい言い方です。違う言い方をすると、商標法の定義に含まれない、たとえば、「匂い」や「手触り」は、商標ではないということになります。

 でも実際は、スーッと鼻に通るサロンパスの「匂い」やカップラーメン背脂とんこつ醤油の「味」、あるいは、ユニクロのアンダーウェアの「手触り」なども、商品を選ぶときのサインとして機能していますよね。知覚や聴覚によって認識できなくても、臭覚、味覚、触覚によって区別できるなら、これらも商品を見分けるためのサインなのだから商標であると言っていいはずです。

 つまり、商標法で定義された商標と、現実に私たちが五感で感じることができる識別マークとにズレがあるのです。このズレが世の中をカン違いさせています。

 どうしてズレがあるのかというと、商標法は一般の取引で使われる商標全般について定義しているのではなく、商標登録によって「保護することのできる商標の範囲」を決めているだけだからです。

 その商標の範囲は誰がどうやって決めるのかというと、それは商標法もひとつの「法律」ですので、最終的には国会議員のセンセイたちが審議して決めます。

 でも、それは一度決めたらテコでも動かないというものではありません。

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