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マツダの対話革命「Zoom-Zoom」

ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長 長島 聡氏

ユーザーを評価する

 ユーザーの求めにそのまま応じると、高機能化していくかもしれないが、それが必ずしも市場で評価されるとは限らない。これは、顧客のために最高のものを目指したいと考える日本企業が陥りやすい落とし穴である。

 では、ユーザーからのアイデアや情報の取捨選択はどのように行えばいいのだろうか。たとえば、ユーザーによる否定的な意見にも耳を傾ける。あるいは、ライドシェアサービスを提供するウーバーのように顧客やドライバーをレーティングするようなやり方もある。提示した問題に対して的確に反応できる人とそうでない人を見極め、前者をティーチャーカスタマーと位置付け、発言の重要性を判断してもいい。

 シャオミの場合も、オピニオンリーダーや過去に適切な意見を出してくれた人の情報を蓄積し、ユーザー評価を行い、売れる機能と売れない機能の選別に役立てている。「この価格でこの機能なら欲しいと思いますか」と機能と価格をセットで尋ね、開発をスタートする前に購入意向を確認するやり方ももちろん有効だ。

 その一方で、メーカーが「こうした機能、こうした価値を届けたい」という明確な意志を持ち、さまざまな機能を安価に生み出す工夫も欠かせない。たとえば、シャオミの戦略を見ていると、何でも制限なく開発するわけではない。アップデートの対象はハードウェアではなく、ソフトウェアというように、短期間で変えられる部分に絞っている。

 「ハードウェアではスケールメリットを徹底的に追求する」「必要な機能はソフトウェアで提供し、採用・不採用は利用者に選んでもらう」といった方針を定めて工夫をすれば、メーカーはブランドを際立たせた上で、個々のユーザーにぴったり合った高機能化を実現し、高い評価につながっていく。何事もメリハリが必要なのだ。

長島聡著 『AI現場力』(日本経済新聞出版社、2017年)3章「対話革新」から

長島 聡(ながしま さとし)

ローランド・ベルガー日本法人 代表取締役社長、工学博士。
早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手を経て、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギー、消費財などの製造業を中心として、グランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装など数多くの プロジェクトを手がける。特に、近年はお客様起点の価値創出に注目、日本企業の競争力・存在感を高めるための活動に従事。
以下のアドバイザーを務める。アスタミューゼ、エクサインテリジェンス、カイゼン・マイスター、リンカーズ、カブク、ドリーム・アーツ、エクシヴィ、ベッコフオートメーション
一般財団法人素形材センター「素形材産業を含めた製造基盤技術を活用した『稼ぐ力』研究会」委員、経済産業省「ファッション政策懇談会」委員、一般財団法人企業活力研究所ものづくり競争力研究会委員。
自動車産業、インダストリー4.0/IoT をテーマとした講演・寄稿多数。近著に『日本型インダストリー4.0』(日本経済新聞出版社、2015年)。

AI現場力

著者:長島聡
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,836円(税込)

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