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FIN/SUM WEEK 2017 レビュー

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地域にどんなエコシステムを作るかが問われる

FIN/SUM WEEK 2017 討論会「フィンテックによって地方創生を実現できるか」より

小松 地域エコシステムをクラウドファンディングの側面で述べたい。2000年に設立したミュージックセキュリティーズは、「音楽家のための証券会社をつくる」ことが当初の目的だったが、インターネットを使った新しい資金調達手法である「セキュリテ」を開発し、地方の事業家と個人を結ぶ資本性資金の供給スキームを構築した。この結果、資金インバウンドと人のインバウンドの実現が可能になった。これからは投資家がメリットを受けつつ社会的課題の解決を図るインパクト投資プラットフォームに注目している。

岩田 地域にイノベーションを起こすための技術と人の集積、厚みをどうすれば実現できるか。

阿部 地域には農林業や観光など資源があるが、それを生かす人材が足りない。地域にイノベーションを起こす人材の核になるのは大学だ。そうした意味で、首都圏の大学が短期間に入学定員を増やすのは問題があると感じている。

五十嵐 都市に大学があるからといって、その都市にイノベーションを起こす人材が豊富に供給できるわけではない。九州大の卒業生のうち4割が首都圏に出て行く現状がある。ただし、卒業者の中で福岡に帰ってきたいという人は多く、こうした人たちを受け入れるシステムが必要だ。

五十嵐信吾氏(九州大学准教授QREC副センター長) 五十嵐信吾氏(九州大学准教授QREC副センター長)

石丸 約20の大学がある福岡都市圏には若者が多く、中でも福岡市では若い女性が多いのが特徴だ。女性向けのサービス業が相対的に充実していることもあり、この領域における企業の素地はあるといえる。実は福岡市では、毎年1割近くの住民が入れ替わるというデータがある。人材確保は人を囲い込むのではなく、人の流動を促す方が効果がある場合がある。

阿部 長野県は多様な地域性があり、東京から人が流入してくる軽井沢地域もあれば、観光などで若者が集まってくる小布施のような地域もある。小布施町は伝統的に住民の力が強く、そこに行政が乗っかって様々な施策を実行している。地域の人材の厚みを考える点で参考になるだろう。

小松 地域の人材の視点でも、資本蓄積が重要な要素だと思う。日本各地には巨額の資本が蓄積されているが、これをどうやってイノベーターに渡すかがうまくできていない。せっかく有望なビジネスをやろうと考えても、地域金融機関は規制などで出したくても出せない場合がある。従来の仕組みでは蓄積した資本を回す相手が見つからず、資金が欲しいイノベーターは資本を持つ相手が見つからない。そうしたミスマッチをフィンテックで解決できる仕組みが必要になってくる。

失敗を重視する空気づくりが必要

岩田 地域でスタートアップ企業が直面するリスクをどう低減していくか。

五十嵐 スタートアップの三重苦のうち、製品化のリスクは国や自治体の補助金など助成策がある。製品をどう売るかのマーケットリスクは、地域の会社が購入するなどの仕組みが必要だろう。スタートアップの組織を拡大するためのマネジメントリスクをどうするかも考えていく必要がある。

小松 クラウドファンディングはマーケットリスクを低減する効果がある。

石丸 FDCが進めているように、スタートアップの支援を拡大するために、行政の従来のルールを変えることを考えてもよい。

阿部 スタートアップを支援する地域エコシステムの構築には、失敗した人をどう重視するかの視点が必要だ。教育で失敗を許容する空気を作らなければならないだろう。

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