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FIN/SUM WEEK 2017 レビュー

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地域にどんなエコシステムを作るかが問われる

FIN/SUM WEEK 2017 討論会「フィンテックによって地方創生を実現できるか」より

 「FIN/SUM WEEK 2017」2日目の9月20日、東京・丸ビルのメーンホールで、パネルディスカッション「フィンテックによって地方創生を実現できるか――産官学民それぞれの立場からみたエコシステム形成」が開催された。討論では、地域にイノベーションを起こす条件などについて示唆に富んだ意見が出た。登壇者と主な発言内容は以下のとおり。(文中敬称略)

登壇者
阿部守一氏(長野県知事)
五十嵐信吾氏(九州大学准教授QREC副センター長)
石丸修平氏(福岡地域戦略推進協議会事務局長)
小松真実氏(ミュージックセキュリティーズ代表取締役)

司会
岩田太地氏(NEC Fintech事業開発室長)

左から岩田太地氏(NEC Fintech事業開発室長)、阿部守一氏(長野県知事)、

 五十嵐信吾氏(九州大学准教授QREC副センター長)、石丸修平氏(福岡地域戦略推進協議会事務局長)、小松真実氏(ミュージックセキュリティーズ代表取締役)



左から岩田太地氏(NEC Fintech事業開発室長)、阿部守一氏(長野県知事)、 五十嵐信吾氏(九州大学准教授QREC副センター長)、石丸修平氏(福岡地域戦略推進協議会事務局長)、小松真実氏(ミュージックセキュリティーズ代表取締役)

地域にイノベーションを起こす条件とは?

岩田 産業の担い手である地域をどう持続していくかについて議論したい。参加者の方々の現在の取り組みは?

岩田太地氏(NEC Fintech事業開発室長) 岩田太地氏(NEC Fintech事業開発室長)

阿部 長野県は2018年度から始まる次期総合5カ年計画を策定中だ。その中で未来を考える上で最も重要なのは人材だと思っている。来春開校の長野県立大学の目的は人づくりであり、産官学連携の拠点になる。

 フィンテックと投資という面では、県内でクラウドファンディングを使ってワイナリー(ワイン醸造所)や太陽光発電に取り組むケースが出てきた一方、観光やインバウンドの面ではカード決済などで遅れている部分がある。移住したい地域の調査で長野県は人気が高いが、個人や企業がもっと移住・移転してもらえるように取り組んでおり、広くアイデアを募る「規制改革提案ボックス」なども設置している。

五十嵐 2010年に九州大学内に「ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター」(略称QREC)を設置して積極的に新しい価値創造にチャレンジし、自らの夢実現を目指すアントレプレナー育成を目指している。

 企(起)業家を育む地域エコシステムには、いろいろな要素が絡んでくる。米国でスタンフォード大学があるシリコンバレーや、MIT(マサチューセッツ工科大学)があるボストンを分析すると、人と技術が集積する地域で多くのスタートアップ企業が興り、消えていった。成功する確率はまさに千に三つぐらいだが、成功者が大きな雇用と新産業の担い手になるという流れが次から次へと起きている。

阿部守一氏(長野県知事) 阿部守一氏(長野県知事)

 そこで地域にどういうエコシステムを作るかという問題を提起したい。成功の確率を考えると、技術的なスタートアップ企業が雨後のタケノコのように発生してくる必要がある。そのため、スタートアップをどういうプロセスで生み、人材をどう供給していくかがまず必要だ。その次に、スタートアップが直面する三重のリスク(製品開発・販売・経営)をどう軽減するか、そしてこれらのエコシステムを、誰がイニシアチブを取って構築していくかだ。QRECではこうした視点で研究している。

石丸 産学官民が一体となった地域の国際競争力強化を目的に、2011年に福岡市をはじめとする9市8町が連携して「福岡地域戦略推進協議会」(FDC)を設立した。現在の151会員のうち、半分以上を地域外企業が占めている。国際的な都市ネットワークである「国際地域ベンチマーク協議会」(世界10都市で構成)にも参加し、国際的な都市地域ネットワークづくりにも取り組んでいる。

 FDCの狙いは第3次産業を中心とした都市づくりを目指してきた福岡市を中心に、イノベーション都市圏としての強みをどう発揮していくかを考え・実行する「シンク・アンド・ドゥ・タンク」であり、福岡市を起点とした東アジアのビジネスハブにすることを目標に各方面で産官学民が連携して事業化することがポイントだ。福岡が持っていないリソース(資源)は海外の都市とも連携することで補っていく。地域のための事業をプロトタイプのままで終わらせず、行政や大学、企業や住民が一体となって社会制度にしていくイノベーションサイクルをつくっていこうとしている。

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