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FIN/SUM WEEK 2017 レビュー

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日本の仮想通貨、ガラパゴス化防げ

FIN/SUM WEEK 2017 対談「仮想通貨の未来」より

 「FIN/SUM WEEK 2017」では9月21日、東京・丸ビルのメーンホールで「仮想通貨の未来」をテーマに、北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役社長)と櫛田健児氏(スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員)が対談を行った。対談では、日本独自の仮想通貨がガラパゴス化しないよう、国際基準となりうる仮想通貨の育成が重要との意見などが出された。おもなやり取りは以下のとおり。(文中敬称略)

北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役社長)と櫛田健児氏(スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員) 北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役社長)と櫛田健児氏(スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員)

常に自己否定していくプロセスが最も重要

櫛田 米シリコンバレーから見ると、最新テクノロジーを巧みに利用して既存の金融市場を切り開くフィンテック企業に対し、既存の金融業界はそれを飲み込もうとしているようにも見えます。フィンテックは『ディスラプター(破壊者)』であり続けられるのでしょうか。

櫛田健児氏(スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員) 櫛田健児氏(スタンフォード大学アジア太平洋研究所研究員)

北尾 SBIホールディングスは、前身のソフトバンク・インベストメントが1999年に設立して以来、インターネット技術により既存の金融サービス秩序を創造的に破壊し、新しい秩序の構築を進めてきました。しかし、この秩序もいずれ破壊され、新しいビジネスやサービスに変わっていくでしょう。常に自己否定し、自己変革し、自己進化していくというプロセスが最も重要です。

 今回のテーマである『仮想通貨の未来』について、ビットコインの現状をみましょう。ビットコインをはじめとする仮想通貨全体の時価評価額は10兆円以上に達しており、この規模になれば存在として認められたと言えるでしょう。ただし、私はまだ仮想通貨は環境が整備されておらず、投機の側面ばかりが目立っているとみています。ビットコインが抱えている問題は、①電力の安い中国に偏ったマイニング、②実需の伴わない投機的価格変動の要素が強い、③ビットコイン発行体の評価システム未整備――の3点です。各国も仮想通貨に対する姿勢が固まっていませんし、国際的な会計基準などの枠組みも全然整備されていません。

北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役社長) 北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役社長)

櫛田 銀行システムへの接続仕様を外部の事業者に公開するオープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の流れにより、金融サービスの差別化が難しくなってきています。銀行側はコストカットに懸命ですが、そうなると顧客側にとって新しい付加価値とは何になっていくのでしょうか。こうした中で、仮想通貨は具体的な役割を持つことになりますか。

北尾 仮想通貨が具体的な役割を持つ可能性を考えると、やはり決済機能でしょう。ところがビットコインを実際に決済に使用しようとする実需はまだ小さいのが現状です。送金面ではリップル(XRP)がグローバルになっていくでしょう。私は決済機能は一気に仮想通貨に行くのではなく、その一歩手前の技術に移行していくのがよいのではないかと思っています。

 具体的な役割で言えば、ビットコインの中核技術であるブロックチェーンに注目しています。ブロックチェーンは金融だけでなく、社会のいろいろな分野で使われていく可能性があり、どんどん使われれば安心感も出てきます。ブロックチェーンが社会革命を起こし、その後にまた金融に戻ってくる、それが仮想通貨という気がします。

世界標準の仮想通貨をどう健全に育成するかが大事

櫛田 かつて日本の多機能携帯電話(ガラパゴス携帯)は世界をリードする機能やサービスを持っていましたが、主流になれずにスマホに取って代わられました。フィンテックの分野でも日本が国際的な展開をしないまま、ガラパゴス化する懸念はありますか。

北尾 仮想通貨に関して、日本の金融グループでも独自の仮想通貨を発行しようという動きが出てきました。しかし、仮想通貨で重要なのは世界で通用するグローバルスタンダードです。国内の仮想通貨がどう発展し、どういう役割を持つのか疑問です。下手をすれば、またガラパゴスで終わりかねません。ビットコインなどグローバルスタンダードの仮想通貨をどう健全に育成していくかの方が大事だと思います。

(日本経済新聞社 FIN/SUM事務局)

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