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リクルートのすごい構"創"力

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「神速」で減退の兆しつかみ、手を打つ

ボストンコンサルティンググループ日本代表 杉田 浩章氏

絶妙な舵取りでS字をコントロールし続ける

 経営層の役割は、事業の成長段階によって大きく変化する。「0→1」の、新規事業の芽を探し出し、GOサインを出す段階においては、「判断」が中心だ。「1→10」の最初の段階では、「そもそも勝ち筋は何だ?」「マネタイズできるのか?」と問いかけることが加わる。事業を継続するか、撤退するか、などの判断も行うが、関わる頻度は下がってくる。

 「1→10」の後半、拡大再生産のステップに入ると、経営層が判断に関わることは減り、現場に任されることが一層増える。そしてその役割は、「〇年後に〇億円規模のサービスに育てる」という目標設定をストレッチし、より高めることが中心になってくる。

 しかし、単に口だけで「もっと高くしろ」と発破をかけるだけではもちろんない。「そんな大きな規模に成長させるのはムリです」という声が現場から上がった場合は「なぜムリなのか」を突き詰める。伸ばすためには何が足りないのか、足りないのは人材なのか、資金なのか、サービスの認知度か、などを明確化する。単に追い込むだけではなく、実現するために必要なリソースを投入したりもする。

 普通に手を伸ばせば届くような目標値ではなく、ちょっとジャンプしたくらいでは手が届かないようなレベルに設定させる。そして、実現するために何が必要かも見極め、それを担保するのが、リクルートの経営層の役割だと定義されているのだ。

 「スタディサプリ」(旧・受験サプリ)の場合は、当初のプランに対し、経営層からは、「もっと大きな可能性があるのではないか」と、目標設定を高めるよう求められた。そして目標売上規模は上方修正された。

 また、その実現のためには一気に知名度を高める必要があるとして、大規模なテレビCMを実施することも合わせて決定され、投資規模は5倍以上になった。これで一気に受験サプリの認知度が上がり、その後の成長につながった。

 2013年11月にサービスを開始した「Airレジ」も、市場トップの地位を獲得するためには、他社に先んじてサービスを普及させることが必要との経営判断がなされた。最初に数万台のiPadを無料で配布しながらアプリを展開。スタートダッシュで一気に市場を席捲し、開始後2年間で利用件数は約21万件に急増。2016年12月時点で約27万件が利用する、モバイルPOSレジ市場をリードするサービスとなった。

 どれも、かなり大胆なリソース投入のように見えるが、実は綿密にリスクをコントロールしながらアクセルを踏んでいる。どのケースでも、ぐるぐる図で現場から必要な情報が上がっており、勝ちパターンが見えてきたところで、さらに一段上の成長を実現するために必要な要素を投入している。根拠となる情報をもとに、状況をモニタリングしながら到達目標をストレッチさせている。

 現場の能力を最大限に伸ばすために何をすべきかを考え、必要なリソースを投入す
ることが、リクルートの経営層の一番のミッションなのだ。

杉田浩章著 『リクルートのすごい構"創"力』(日本経済新聞出版社、2017年)第3章「爆発的な拡大再生産」から

杉田 浩章(すぎた ひろあき)

ボストンコンサルティンググループ日本代表。
東京工業大学工学部卒。慶応義塾大学経営学修士(MBA)。株式会社日本交通公社(JTB)を経て現在に至る。消費財、自動車、メディア、ハイテク、産業財等の業界を中心に、トランスフォーメーション、グローバル化戦略、営業改革、マーケティング戦略、組織・人事改革、グループマネジメント等のコンサルティングを数多く手掛けている。著書に『BCG流 戦略営業』(日経ビジネス人文庫)、監訳書に『なぜ高くても買ってしまうのか』『なぜ安くしても売れないのか』(以上、ダイヤモンド社)がある。

リクルートのすごい構"創"力

著者:杉田浩章
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,728円(税込)

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