日本経済新聞 関連サイト

石澤卓志の「新・都市論」

記事一覧

実は割安、 都心のオフィス立地コスト

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

 企業数や事業所数など、ビジネス機能の立地場所を見ると、全国レベルでは東京圏に、東京23区内では都心3区に偏在している。地価の高い都心部に企業等が集中していることは、コスト面で不合理に感じられるかもしれないが、実は合理的な理由がある。取引先とのコミュニケーションに係る利便性などを考慮すると、都心に近づくほど実質的な立地コストが安くなるからだ。しかし今後は、「働き方改革」の進展や「テレワーク」の普及によって、都心立地の優位性が低下する可能性がある。

不動産投資やビジネス機能は、東京都心部に一極集中

丸の内など都心のオフィス需要は根強い 丸の内など都心のオフィス需要は根強い

 9月に公表された基準地価を見ると、東京・銀座など不動産投資が盛んな場所で地価が大幅に上昇した例が目立った。地価を「地域の活力のバロメータ」と考えた場合、不動産投資は「活力の源」とも言える。

 「不動産投資」という言葉に、あまり良いイメージを持たない人も多い。バブル経済期の地価高騰の印象が強いためと思われる。しかし、転売目的の「投機」と、実需に基づく「投資」は、全く内容が異なる。たとえば、企業が自社ビルを建てたり、賃貸ビルを借り増しすることなども「不動産投資」に当たる。個人がマンションを購入することや、アパートの家賃を支払うことも、広義の「不動産投資」と言える。東京・銀座の場合は、「GINZA SIX」の建設など、再開発に伴う「不動産投資」が地価の大幅上昇をもたらした。

 現状では、不動産投資が活発な場所は、大都市の中心部に集中している。国内法人としては最大の「不動産の買い手」であるJリート(不動産投資信託)が保有する物件を見ると、約73%が東京圏(1都3県)に立地し、特に東京都心3区(千代田、中央、港)に全体の約24%が集中している。不動産投資の一般論では、地震リスクや地域経済の変動リスクを軽減するために、投資対象を全国に分散させることが好ましいと考えられているが、実際の投資対象は東京都心部に一極集中している(図表1)。

図表1:不動産投資、ビジネス機能の立地状況

注:「東京圏」とは、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県。<br>

  「大阪圏」とは、大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山の2府4県。<br>

  「名古屋圏」とは、愛知、三重、静岡、岐阜の4県。<br>

出所:① Jリート各社の公表資料により、みずほ証券が作成。②2016年経済センサスにより、みずほ証券が作成。<br>

   ③④2014年経済センサスにより、みずほ証券が作成。 注:「東京圏」とは、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県。
  「大阪圏」とは、大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山の2府4県。
  「名古屋圏」とは、愛知、三重、静岡、岐阜の4県。
出所:① Jリート各社の公表資料により、みずほ証券が作成。②2016年経済センサスにより、みずほ証券が作成。
   ③④2014年経済センサスにより、みずほ証券が作成。

 この一極集中は、Jリートの資産の約43%(2017年8月時点、取得価格ベース)を占めるオフィスビルが、テナント候補(企業)が集積している大都市でなければ、収益の確保が難しいことが大きな要因と考えられる。また、住宅の主な買い手である勤労者も、雇用者(企業)が集積する大都市圏に多く居住している。

 全国の事業所(全産業)の立地場所を見ると、東京圏が約26%を占める(2016年経済センサス)。このデータだけでもかなり偏在していると言えるが、「資本金3億円以上の企業数」で見ると、東京圏が約54%と過半を占め、特に東京都心3区に全体の約26%が集中している(2014年経済センサス)。東京23区内でも偏在度は大きく、本社・本店については、都心3区に約23%が所在している。

PICKUP[PR]