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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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意思あるところにAIを生かす道は開ける

第9回 エクサウィザーズの石山洸社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

長島 社会と向き合うことに関連して、石山さんはよく「ウエットウエア」という言葉を使われますよね。これはどういう意味ですか。

人の心を動かす「ウエットウエア」

石山 私の恩師である東京工業大学の出口弘教授(同大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻)に教わった言葉です。コンピューターはハードウエアとソフトウエアのプログラミングでできているが、人間がやることはもっとウエットである。それが生きるような広義のプログラミングをどう実現するかを考えよう、というものです。

長島 要はハード、ソフト、ウエットの連携というわけですね。

石山 はい。実はこの言葉は私がリクルートに入社するきっかけにもなりました。インターンに参加したとき、途上国にパソコンを送るNPOを運営していたという人事の人がいました。その人は日本に来ていたアラン・ケイに直接会いに行き、自分のやっている活動のことを話したところ、アラン・ケイが感銘を受け、インドネシアにパソコンを送ってくれたというんですね。

 この話を聞いて、自分は世の中の課題を解決するためにハードとソフトを動かすことだけ考えていたけど、人を動かす要素もあるんだと気付きました。コミュニケーションを通じて人を動かし、課題解決に導く。そういうスキルを身に付けたい、リクルートなら身に付けられるかもしれないと。

長島 人を動かすのは「情」みたいなものですが、そういう感覚的なものをAIで実現できるのでしょうか。

石山 人間の脳は「動物の脳」といわれる情動系と、論理的に考える皮質の両方を使ってコミュニケーションします。従来は、再現性は難しいと言われてきました。先ほどの例で言えば、私がアラン・ケイの心を動かせるかという話です。しかし現在は、AIコーチングを使い、ハイパフォーマーのコミュニケーションの仕方自体を教えることが可能になりつつあります。十数年かかって、テクノロジーでウエットウエアを実現できる時代がそこまで近づいてきたわけです。

長島 なるほど。

石山 ウエットウエアを動かす中でもう一つ面白いと思うのは、ウエットウエアには個人と社会の両方の側面があり、社会科学でいうミクロとマクロの関係にも通じるという点です。例えば、「働き方改革」とは何か。個人のダイバーシティーの実現という意味もあれば、経済成長というマクロ経済からの要請という面もあり、非常にあいまいで、かつバランスをとるのが難しいと思われています。しかし、AIを人事制度や生産性向上に活用することで、個人の働きやすさと企業や経済全体の成長の両立を目指す動きが活発になっています。

 介護の世界も同様です。企業体としての介護事業者が収益を上げることと、社会保障費の抑制をどう両立していくかは非常に難しい問題です。AIコーチングにより、ユマニチュードを普及させ介護負担を減らすことは、国全体の社会保障費の抑制につながります。

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