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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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意思あるところにAIを生かす道は開ける

第9回 エクサウィザーズの石山洸社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

石山 そもそものきっかけが9.11ですから、社会課題への関心は最初からあったということでしょうね。当時、授業を取っていた大学の先生に、なぜ社会科学の道に進んだかを聞くと、「ベルリンの壁」崩壊がきっかけでした。これからは東日本大震災が起きた「3.11」をきっかけとする世代が台頭してくるのでしょう。実際、社会の閉塞感を感じている若者は多くなっている気がします。

長島 と言いますと?

「勇者」を目指す人を応援する「魔法使い」に

石山 特定のルールに乗っていけば成功する時代は終わり、世の中を変えていかないと自分の未来もない。そういうことを多くの若者が理解し始めています。先ほどのフロイトの話でいうと、自我と超自我をイコールとして捉えているわけです。実際、インターンシップで若い人と話していると、ベースとして考えていることがリアルに大きい。SNSで多くの人とつながることができるので、感じた課題に飛び込みやすく、アクションしやすい。さらに、いろんな人に会いながら、自分を成長させることも高速でできる。そんな時代が来ている気がします。

長島 大きな災害などを経験すると感受性が強くなるようですね。そこから、とにかく動いて、人と会って刺激を受ける。AIやSNSをあたかも自分の能力のように生かしながら、超自我を目指そうとしているわけですね。

石山 漫画やロールプレーイングゲームのように、誰でも勇者になれる世界が来ているとも言えます。私たちは「魔法使い」として、勇者を目指す人を応援していきたい。そもそも、AIは何らかのテーマを入力しないと動かない世界です。だから、AIの研究者は解決したい課題とセットで考えていることが多いと思います。

長島 意思がなければAIは使えない。意思の大きさが個人から社会へと大きくなっていくイメージですね。ところで石山さん、AI歴は何年ですか?

石山 15年くらいですかね。

長島 そのくらい勉強しないとAIは使えないでしょうか。普通の人でも使えるようにはなりませんか。

石山 技術はダウンサイジングしており、学びやすい環境になってきていると思います。私たちの会社も、世の中すべての人がAIを作ったり、使ったりできる「AIの民主化」をテーマとして掲げています。例えば、世界の人口は今ざっと80億人ですが、AIに関する論文が5000回以上引用されているトップクラスの研究者は800~1000人と言われます。800人が研究するのと、80億人が研究するのと、どちらが進化のスピードが速いか、明白ですよね。スピードだけでなく、さまざまなタイプが生まれるダイバーシティー(多様性)の観点からも、豊かな成果が生まれる可能性が高い。

長島 確かにそうですね。

石山 だから800人のトップ研究者がやるべきことは、80億人が使えるインフラを整えることなんです。それが社会全体を良くすることにつながる。実際、米フェイスブックは研究者の半分が、AIやディープラーニングを快適に使えるインフラを作り、残る半分がそのインフラの上で使うアプリケーションを開発していると言われます。この体制こそが、10億人ものユーザー獲得につながっているわけです。

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