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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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意思あるところにAIを生かす道は開ける

第9回 エクサウィザーズの石山洸社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

長島 そうですね。ところで、石山さんは大きな課題を解決したいという強い意思(Will)をお持ちですが、それはどういう風に育まれたとお考えですか。というのは、今の世の中、「自分はこれをやりたい」という志を持ち続けるのは難しいと思うんですね。

アラン・ケイの「四位一体」説に触発

石山 その問い自体が、AIの研究対象になりますね(笑)。人間の欲求は低次から高次へどう進化していくか。恋愛で考えてみましょう。好きな人ができると、最初はデートしたいと思いますよね。デートを重ねるうち、人生を通じてこの人を幸せにしたいと思うようになる。それは、この人が持っている課題を解決したいという気持ちにつながる。さらに、同じ課題を持つ人は世の中に大勢いることに気付き、社会課題の解決を考えるようになる。フロイトはこれを「イド」「自我」「超自我」という3つの階層で考えていました。イドは本能のままの欲求。自我は人間としての個人的な欲求。そして超自我は社会的な欲求です。

長島 欲求を突き詰めると超自我に行くけど、またイドに戻る。人間の感情って振り子のように揺れている気もします。

石山 個人的にインパクトを受けたのは、大学院生のとき、パソコンの父といわれるアラン・ケイの講演を聞いたことですね。テクノロジー・メディア・リテラシー・レボリューションの4つを「四位一体」で考えることが重要だという話です。グーテンベルグの活版印刷というテクノロジーによって、聖書というメディアの大量印刷が可能になった。そのおかげで人々の識字率というリテラシーが向上し、それが最終的に宗教改革というレボリューションにつながったというわけです。

 活版印刷がデジタルというテクノロジーに変わり、現代はまさに第4次産業革命と言われています。時代を先取りしていたわけですね。いま私がやろうとしているのは、介護(ケア)の世界でレボリューションを起こすことです。ディープラーニング(深層学習)というテクノロジーを使い、ケアの様子を映した動画を解析し、それをメディアとして普及させることで、人々の介護リテラシーを高める。誰もが介護するのが当たり前になれば、ケアに対する価値観が変わるのではないかと思うのです。

長島 まさにレボリューションですね。ケアという言葉がなくなり、意識せず自然に話したり、接したりするようになることが究極の姿なのかもしれません。

石山 おっしゃる通りです。介護という言葉が日本で普及したのはここ30年くらいですが、なんとなくネガティブなイメージがあるのは否めません。それを変えていきたい。

長島 石山さんのお話をうかがっていると、偶然ではなく、必然的に志というものに出会えているようにも思えます。どうすれば、そういう出会いを作れるでしょうか。

石山 偶然か必然かはわかりませんが、外部環境が影響するのは確かだと思います。私の場合、文系ながらプログラミングを始めたのは、「9.11」つまり2001年の米同時テロがきっかけでした。当時は海外に出たことがなかったのですが、世の中は大きく変わろうとしている、世界を見てみたい、と思ったんですね。ところがお金がない(笑)。そこで米国に行く術をいろいろと調べてみると、人工知能のプログラミングのコンテストがあり、日本の予選を通過すればタダで行けるという。「これだ!」と思い、プログラミングを猛勉強して予選を通過し、願いをかなえることができました。

長島 すごい吸収力ですね。

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