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リクルートのすごい構"創"力

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「勝ち筋」に直結するKPIを徹底して探す

ボストンコンサルティンググループ日本代表 杉田 浩章氏

 リクルートが、多くの新規事業を世に出し、継続的に収益を上げ続けているのは、一握りの「天才」たちの力によるものでもなければ、偶然の産物でもない。できるだけたくさんの、新規事業の「種」を見いだし、それを高速で磨き上げながら市場に出すための仕組みや、市場に出た後も事業の衰退を許さず、継続的に成長させていく手法を、しっかりと社内に根付かせ、愚直に、しつこく実行しているからだ。仕組みやフレームワーク=「構え」でアイデアを事業へと創り上げていく。こうしたリクルートの「構"創"力」について解き明かしていく。

「お手盛り」になりがちなフィジビリ

勝ち筋につながるKPIを探す 勝ち筋につながるKPIを探す

 マネタイズできるかどうかを検証し、見極め、勝ち筋を見つけるために行うのが「フィジビリ」だ。

 ほかの企業でフィジビリと言えば、机上での分析や検討などを中心に進めることも多いが、リクルートの場合はかなり本格的で、より範囲を広げたテストマーケティングに近い。本格的な事業化を行う前に、限定的な市場・規模にサービスを出し、実際の顧客から評価を受けながらサービスの内容やオペレーションをブラッシュアップしていく。リクルートでは、「勝ち筋」「マネタイズ」などの定義も独特だが、フィジビリの中にこそ、新規事業開発の神髄が隠されている。

 多くの企業で行われるフィジビリを見ていると、意図的にうまくいっている部分だけを抽出し、事業化へのお墨付きを与えるためだけに実施される形式的なものであることも多い。「こんなサービスがもしあったら買いますか? いくらくらいだったら買いますか?」といった、簡単なアンケート調査を実施したり、外部の調査会社のレポートをもとに、市場規模を算出するなどの机上の分析を行う程度ということもある。

 仮に試験的に市場に出す場合であっても、目的を明確に設定しないままで何となく始めてしまう。あらかじめ決められた期限になったら自動的に終了して、そのまま本格的な事業展開をすることになってしまうことも多い。

リクルートで重視される「KPI」とは

 一般的な企業で行われているフィジビリと、リクルートのフィジビリの決定的な違いは、KPIにある。通常のフィジビリが、明確な検証項目を持たないまま実施され、「売上が立った」程度のものを合格点としたお手盛りのものに終始してしまっているのに対し、リクルートのフィジビリが、ステージ3以降で事業をスケールさせるための土台を作れているのは、「価値KPIを探し出せない限りはフィジビリを完了できない」とされているからだ。

 KPIとは重要業績評価指標と訳され、一般的には事業の進捗や効果を測るうえでカギとなる指標を指す。リクルートにおけるKPIは、事業の価値向上に直結する行動や指標を指し、リボンモデルの設計と密接に関係している。リボンモデルの左右で、個人(消費者)や企業・事業者を「集める」「動かす」「結ぶ」のそれぞれで、サービスの効果(個人や企業に提供している価値の高さ)を表す指標は何であるかを探し出すのだ。言い換えると、何を磨けば、リボンの左右両端から中央の結び目に向かってステークホルダーが動くのかを見定めるものだ。

リボンモデルの詳細図

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