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ビシネス活用が進むVR

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協力:KDDI

視覚だけで「押す」を再現、VRの技術は第2世代へ

東京大学の廣瀬通孝教授に聞くVRの先端

 社内教育、営業支援、娯楽施設の演出といった幅広いビジネス用途で活用が本格化しているVR(仮想現実)。ICT(情報通信技術)で人工的な現実感を作り出すこの技術の最先端では何が起きているのか。VRの研究に長年取り組んできた東京大学大学院情報理工学系研究科の廣瀬通孝教授に、最新の研究について聞いた。

 廣瀬教授は「現在のVR技術は、数年前のVRに比べ量的に豊富になったほか、質的に違う、『第2世代』と呼べるものになっています」と話す。大きな変化は、開発から利用までにわたるビジネス生態系(エコシステム)が構築され、応用の機運が急速に高まったことだ。また、基礎研究においても、視覚だけで、モノを押す「力」を感じるといった、心理学・脳科学を巧みに利用したものが盛んになるといった進歩があるという。

ビジネス生態系が構築され、応用の機運が急速に高まる

東京大学大学院情報理工学系研究科の廣瀬通孝教授 東京大学大学院情報理工学系研究科の廣瀬通孝教授

 まず、廣瀬教授は、VRの歴史を振り返り、『第1世代』と呼べる従来の技術の特徴をまとめた。第1世代のVRは米国のベンチャー企業「VPL Research(ブイピーエルリサーチ)」が1989年に発表した技術が出発点になっている。同社はゴーグルのように目の上に装着して没入感の高い映像を見せるヘッドマウントディプレイ(HMD)を初めて商品化。頭部の動きに合わせて映像を動かし、あたかも映像の中に入って動き回っているかのような体験を実現した。

 「同社の発表資料で『VR』という言葉が使用され、それが広く知られるようになりました。HMDの商品名は、くしくも『アイフォン(EyePhone)』(目の電話)というものです。当時のHMDの画像は文字も満足に読めないほど粗かったのですが、データグローブという手袋に似た装置によって指の曲がりに対応することもできました」(廣瀬教授)

※ただし当時、VPL ResearchのVRが本当に新しい技術なのかという議論はあったという。米ハーバード大学やユタ大学で教職についたアイバン・サザランド氏らが、1968年にHMDで立体的な画像を見る装置を開発し、デモが行われている。廣瀬教授はこれを「第ゼロ世代」と呼ぶ。

 現在のVR製品で使われているHMDは、この第1世代のHMDと外観に変化はないように思える。しかし廣瀬教授は現在のVRには、以下のような特徴があり、第2世代と呼べるものになっていると指摘する。

<b>現在のVRの特徴</b> 第2世代と呼べる大きな変化がある 現在のVRの特徴 第2世代と呼べる大きな変化がある

・ウエブ環境との接続
 まず、最近のVR製品はインターネット上のウエブ環境と接続して利用するものが主流になっている。これはネット上に大量に存在するVRコンテンツが利用可能になったという意味で大きい。従来のVR製品はインターネットが普及する前に登場したこともあり、単独で動作するように設計されていたため、コンテンツは限られていた。

・ビジネス生態系の整備
 現在のVRでは、製品の利用者がコンテンツの作成へ積極的に関与できるようになった。コンテンツの作成から配信までが容易になっており、開発者と利用者がビジネス生態系(エコシステム)と呼べる連携を実現している。第1世代のように、開発者がVRコンテンツを作成して提供するしかなかったときと比べると、現在はコンテンツの量が桁違いに多くなった。

 「ビジネス生態系によって技術は強くなります。例えば、自動車は、部品メーカーやディーラー、ガソリンスタンドなどによる生態系が整備されることで大きく強い産業になりました。VRにも同様なビジネス生態系が整備されつつあります」(廣瀬教授)

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