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リクルートのすごい構"創"力

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「勝ち筋を見つける」3つのポイント

ボストンコンサルティンググループ日本代表 杉田 浩章氏

 リクルートが、多くの新規事業を世に出し、継続的に収益を上げ続けているのは、一握りの「天才」たちの力によるものでもなければ、偶然の産物でもない。できるだけたくさんの、新規事業の「種」を見いだし、それを高速で磨き上げながら市場に出すための仕組みや、市場に出た後も事業の衰退を許さず、継続的に成長させていく手法を、しっかりと社内に根付かせ、愚直に、しつこく実行しているからだ。仕組みやフレームワーク=「構え」でアイデアを事業へと創り上げていく。こうしたリクルートの「構"創"力」について解き明かしていく。

最大の強みはここにある

 「不」を発見して描いたリボン図を、New RINGなどで集めて磨き込み、0から1を創造するのが「0→1」の段階。次に行うのは、このリボン図を使ってビジネスを設計することだ。

 0から生み出した1の状態のビジネスアイデアを、どうしたら10にまで飛躍的に成長させ、事業として成立させられるか。その道筋を見極めるのが、この中で行われる「勝ち筋を見つける」というプロセスだ。私はリクルートの最大の強みは、ここにあると考えている。まず、1から10に一気に拡大を図る前の、準備段階にフォーカスしてみよう。

勝ち筋をどう見つけるか 勝ち筋をどう見つけるか

 重要なキーワードの1つが「勝ち筋」だ。囲碁や将棋などでは、効果の高い打ち手について「手筋」という言い方をするようだが、リクルートではそこから派生し、筋のいい、つまり成功の可能性が高い仮説のことを「勝ち筋」と呼んでいる。特に新規事業開発においては、組織全体で収益を生み出し、勝ち続ける可能性が高い仕組みを指す。「1→10」の前半の最大の目標は、この「勝ち筋」を見つけ出し、勝ち筋に直結する「価値KPI」を発見することにある。

 このステージでは、しつこくフィジビリを行い、勝ち筋を探る。しかし、勝ち筋が見つかりそうな兆しさえないと判断されれば、容赦なく撤退する。「不」を発見し、リボンモデルを描いて新規事業コンテストの審査をくぐり抜けたものの、勝ち筋が見つからず「○○準備室」の状態で撤退することになった事業は数多い。

ポイント① クライアントが明確であること

 リクルートにおける「勝ち筋」の定義は、大きく3つあり、フィジビリではこの3つを粘り強く追求する。

 1つ目は、「そのサービスに対して誰がお金を払ってくれるのかが、明確であること」だ。いくら「不」が存在しても、それに対してお金を払う人がいなければ、マーケットは生まれず、ビジネスにはならない。リクルートでは、「いいもの(サービス)であれば、誰かが買ってくれるだろう」という発想は絶対にしない。

 多くのネットベンチャーでは、無料で展開してユーザーを集めたサービスを有料化に移行したり、集まったユーザーに広告を表示することで広告収入を得たりすることで収益化し、サービスをお金に変えようとする(マネタイズしようとする)。その場合も、リクルートで言うところのリボンモデルの片側しか見ないために、マネタイズに失敗してしまうことが多い。

 リボンモデルの片側しか見ておらず、利用者を集めて動かすところまではうまくいくケースも多いが、リボンモデルのもう片側、企業や事業者を集めて動かし、両者を結ぶところでお金が動かないと、リクルートにとっての市場とは言えない。

 逆に、ここで投資することによって明らかな市場の拡大、つまりリボンモデル自体が大きくなることが確実に見込めるのなら、「クライアントの儲けの機会が増えること」を目指して投資を決断することもある。

 リクルートでは市場拡大のために投資を行うことも、企業としての重要な命題の1つだ。このため、景気が悪化したときでもCMやプロモーションには十分な投資を行い、「リボンモデル全体の拡大」へとつなげる機会をうかがっている。

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