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復活したドル高・日本株高に一段の期待

経済アナリスト 田嶋智太郎氏

 下図にみるように、対ドルでのユーロは年初につけた1.0340ドルを大底に、長らく上げ一辺倒の展開を続けていた。ことに、4月下旬に行われた仏大統領選の第1回投票の結果が判明したあたりから一気に強含みの展開となり、9月8日には一時1.2093ドルまで大きく上値を伸ばす場面もあった。ところが、以降は徐々にユーロを売り戻す動きが強まり、9月下旬には長らく下値サポートとして機能していた21日移動平均線(21日線)を下抜け、足下では久方ぶりに一目均衡表の日足「雲」のなかに潜り込む調整色の濃い展開となっている。

日足のユーロ/ドル一目均衡表

 要因として大きいのは、1つに9月初旬あたりまで続いていた「ユーロ高」という現象自体がユーロ圏の域内経済にとって将来的なダメージとなり得るうえ、そのユーロ高が域内のインフレ率の上昇を抑えることによってECBが量的金融緩和の「出口」に向かうための大義名分を失う可能性さえあるとの見方につながることである。

 加えて、今年4月、5月の仏大統領選においてマクロン氏が勝利を収めたことを歓迎するムードに沸いていたときとは、ここにきて域内政治の情勢に少々変化が生じているということも見逃せない。周知のとおり、去る9月24日に行われたドイツ連邦議会(下院)選挙では、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第1党となり、メルケル首相の4選が確実なものとなったものの、与党が議席を大幅に減らしたことで目下は連立交渉が難航しているうえ、極右政党が初議席を獲得して第3党に躍進したことなどが、今後の不安の種となっている。

 ドイツの政治的混乱は、間違いなくユーロにとっては弱気材料の1つとなり得る。まして、今後の連立交渉をまとめるために重鎮であったショイブレ氏が財務相の座を譲り渡すことが決まり、それだけでも金融市場にとっては不安定材料となるうえに、肝心の連立交渉は年末あたりまで長引くとの見方が有力になっている。その間は政治的な空白の時間が続き、そのこと自体がユーロ売りに材料と見なされる可能性もあるだろう。

 さらに、昨今はフランスのマクロン大統領に吹く逆風も見る見る強まっている。マクロン氏が掲げる改革路線が国民には不評で、反対派による大規模なデモやストライキが頻発。そのことがフランス経済に及ぼすダメージは甚大なものとなる可能性があり、今後はユーロの評価が一変する可能性もある。

 結果として、さらにドルの評価が上向いた場合、それは対円においても一定のドル高要因となり得よう。目先は北朝鮮リスクへの備えも必要だが、10月下旬以降、少し長い目で対円でのドルが一段の上値を追う展開となるならば、同じ頃から発表が相次ぐ国内上場企業の4~9月期業績の好調とも相まって、いよいよ日経平均株価が2万1000円台乗せにトライする場面が見られてもおかしくなないものと考える。

田嶋 智太郎(たじま ともたろう)

1964年生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」「生活情報論」の講座を受け持つ。金融・経済全般から企業経営、資産運用まで幅広く分析・研究。新聞、雑誌、Webに多数連載を持つほか、講演会、セミナー、研修等の講師や、テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。主な著書に「財産見直しマニュアル」(ぱる出版)、「外貨でトクする本」(ダイヤモンド社)、「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)、「はじめてのFX『儲け』のコツ」(アルケミックス)、「日本経済沈没!今から資産を守る35の方法」(西東社)、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」(自由国民社)など。

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