日本経済新聞 関連サイト

先読み&深読み 経済トレンドウォッチ

記事一覧

復活したドル高・日本株高に一段の期待

経済アナリスト 田嶋智太郎氏

米12月利上げの見方が再び強まる

 まず何より確認しておきたいのは、ここにきて米12月利上げの可能性に対する市場の期待が再び強まってきているということである。振り返れば、9月半ばから下旬にかけて市場の見方は一変した。

 1つには、9月14日に発表された8月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが前年比+1.9%と、事前予想よりも強めに出たことが大きかった。CPIは米国のインフレ状況を示す重要な指標の1つであり、その値が強めに出ることは当然、近い将来の利上げ期待につながる。

 なお、前回更新分でも話題として取り上げたが、米アトランタ地区連銀が独自にまとめて公表している「Sticky-Price CPI(粘着価格指数)」というインフレ指標は、消費者物価の実勢をより的確に示すものとされており、その8月の「Core sticky CPI(コア指数)」は前月比年率で+3.0%と前月(7月)の+2.7%を上回った。今年4月以降の同指数の伸びには目覚ましいものが認められており、足下では着実にインフレ率が上向いてきているものと推察される。

 また、より大きかったのは9月19~20日の日程で行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明やFOMC後の記者会見に臨んだ米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長による発言の内容、ならびにFOMCに参加したメンバーらによる将来の経済・物価・金利の見通しなどが、いずれも市場がそれまで想定していたものよりも「タカ派的であった」と捉えられたことである。

 少し振り返ると、8月下旬に米ワイオミング州ジャクソンホールで催された経済シンポジウムの場で講演したイエレン氏からは金融政策の見通しについての新たな見解が示されず、結果、市場は勝手に失望し、年内追加利上げ実施の可能性はかなり低くなったと勝手に勘違いした。

 よく考えてみれば、毎年8月下旬に恒例で催されるジャクソンホールの会合は、米カンザスシティ地区連銀が世界中から中央銀行関係者やエコノミストを招いて行うもので、主に世界経済全体が抱える問題や課題についての解決策などをともに議論する、やや"高尚"な場という印象が強い。実際、2017年のテーマは『ダイナミックな世界経済の促進』で、世界的な生産性の伸び悩みや保護主義の高まり、さらなる緊縮財政が求められる局面での経済成長促進などという難解な課題と向き合うことを主眼としていた。

 よって、そのような場で個別の国や地域の金融政策の現状、あるいは今後の方針などについて細々(こまごま)と言及するのは適切なことではないと考えられる。つまり、その場でイエレン議長が金融政策の見通しについての新たな見解を示さなかったからといって、それでイエレン氏はハト派的と解釈するのは大きな間違いであるということだ。

 まして、イエレン氏はFOMCが行われた翌週の9月26日に米オハイオ州クリーブランドで講演し、「物価の停滞はおそらく一時的」「緩やか過ぎる政策調整に慎重になるべきだ」などと述べたうえで、年内さらに1回の追加利上げに前向きな姿勢を示した。

 イエレン氏の発言から察せられるのは、今しばらくインフレ率が低調なままであっても他の指標結果が良好であれば、FRBは適当なペースでの利上げを継続したい意向であると見られる点である。現段階における利上げ措置は、あくまで「金融政策正常化に向かうプロセス」であるということが前提になっていると考えれば、そのプロセスの終点に到達するまでは、インフレなき利上げが行われたとしても十分道理に適うということになろう。

次期FRB議長人事の行方からも目が離せない

 もちろん、米12月利上げの可能性に対する期待が高まってきていることだけが注目に値するドル買い材料というわけではない。足下では、大掛かりな米税制改革の実現に対する期待も盛り上がっており、仮に事がうまく運べば米国経済とドルにとってはプラスとなる。仮にうまく運ばなくとも、元々過去30年もの間、変えられない、決められない案件であったわけであるから、さほどマイナスにはならないといったところであろう。

PICKUP[PR]