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リクルートのすごい構"創"力

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新規事業の条件「市場規模・ユニークさ・志」

ボストンコンサルティンググループ日本代表 杉田 浩章氏

 リクルートが、多くの新規事業を世に出し、継続的に収益を上げ続けているのは、一握りの「天才」たちの力によるものでもなければ、偶然の産物でもない。できるだけたくさんの、新規事業の「種」を見いだし、それを高速で磨き上げながら市場に出すための仕組みや、市場に出た後も事業の衰退を許さず、継続的に成長させていく手法を、しっかりと社内に根付かせ、愚直に、しつこく実行しているからだ。仕組みやフレームワーク=「構え」でアイデアを事業へと創り上げていく。こうしたリクルートの「構"創"力」について解き明かしていく。

アイデアは自然には生まれない

 いくらトップダウンで社員に指示しても、それだけではアイデアは集まってこない。新規事業は、自然発生的に生まれるものではないし、素晴らしいアイデアを生み出す「天才が生まれる」のを待つわけにはいかない。

 もしアイデアが集まったとしても、そのアイデアをどのように事業化につなげるか、道筋が仕組み化、構造化されていなければ、新規事業は生まれない。多くの企業で、「ビジネスコンテストを実施したのに、賞を与えるだけで終わってしまい、新規事業がまったく生まれない」という現象が起きているが、その原因はここにある。

 一つひとつは粗くても、より多くの種を集めてブラッシュアップし、市場に出せるレベルの事業にまでスピーディーに育て上げる、インキュベーションの仕組みが必要だ。リクルートは、アイデアをどう集めるか、集まったアイデアをどう磨き、育てるかを仕組み化し、たくさんの新規事業を世に出してきた。しかも、世の中がまだそれほど「新規事業の開発」に目を向けていなかった頃から、インキュベーションの仕組み作りにエネルギーを注ぎ、時代の変化に合わせて進化させてきたのだ。

 その代表的なものが、新規事業提案制度「New RING」だ。RINGは、「リクルート・インキュベーション・グループ」の略。1982年に日常業務の改善活動について成果発表を行う会として「RING」が創設されたが、90年には新規事業に特化した「New RING」にリニューアルした。

 書類審査、インタビュー審査を経て、最終審査で上位に入賞した案件には予算が付き、事業化に向けた機会が与えられる。これまでに、「ゼクシィ」のほか、「ホットペッパー」の前身となる「生活情報360(サンロクマル)」、中古車情報誌「カーセンサー」、書籍情報誌「ダ・ヴィンチ」(1998年メディアファクトリーに営業譲渡)、前述の「R25」、小中高生向けオンライン学習サービス「スタディサプリ」(旧・受験サプリ)などを世に出している。

 日々の生活の中で見出した「不」をビジネスアイデアにまで高めて持ち寄り、ビジネスモデルに磨き上げて事業化する仕組みだ。アイデアを持ち込むのはリクルート社員に限られない。メンバーに1人でも社員がいれば、他社の社員や学生などとチームを組み、提案することができる。

 New RINGは2014年から、リクルートグループ各社がそれぞれ主催する新規事業提案制度の総称になった。事業会社ごとのNew RINGでは、それぞれの事業ドメインに応じた新規事業を年1回審査する。2015年度の応募総数は約1000件だったという。

 一方、グループ横断では2014年から、リクルートホールディングス主催のNew RING「RECRUIT VENTURES」(RV)を実施。24時間365日エントリーを受け付けており、20%の異動発令が決定される一次審査は月1回以上。よりスピード感を持って新規事業の開発を行っている。

 2015年には三井不動産と組み、リクルートで生まれた新規事業プランを三井不動産が開発した「柏の葉スマートシティ」で実証実験を行うなどの「Smart City Innovation Program」を開始。2016年にはサイバーエージェントと新規事業創出のための共同プロジェクト「FUSION」を実施し、両社社員が混合で編成されたチームで新規事業開発を行う取り組みも行っている。また、「地方創生」もテーマに掲げ、高知県と業務連携協力契約を締結し、フィールドワークを行った。オープンイノベーションを実践するための先進的な仕組みと言えるだろう。

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