日本経済新聞 関連サイト

古川修の次世代自動車技術展望

記事一覧

EVが主流になるとガソリン自動車は消える?

芝浦工業大学 特任教授 古川 修 氏

 最近、自動車の電動化が加速しているというニュースが世界中を駆け巡っている。欧州からは、独仏英が相次ぎガソリンエンジンだけを動力とする自動車の製造を近い将来に禁止すると発表し、米国カリフォルニア州ではZEV(ゼロエミッションビークル)の定義をより厳しくする法令を発令、中国でもHEV(ハイブリッド車)を除いたEV(バッテリーだけを動力とする電動自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)の新エネルギー車(NEV)の大幅な増加目標を掲げた。

 これらのメディア報道に接すると、まるですべての自動車がEVになって、ガソリンエンジンは消えてしまうかのような錯覚に陥る。また、EVが自動車の主流になると、自動車はモーターとバッテリーだけで簡単につくれるようになってしまうので、日本の自動車産業は危ういと懸念するマーケッティング専門家も多い。

 実は、これらは極めて表面的な見方であり、確かな技術論の上で結論づけられているものではない。ガソリンエンジンがすぐに消えてなくなることはないし、EVがゴルフ場の電動カートのように簡単に造れるわけでもない。今回は、欧米中の自動車の電動化についての政策や規制の状況を紹介し、HEV、PHEV、EV、FCVがどのように対応し、そのための技術課題は何かということを考察する。

欧州の自動車電動化政策にはウラがある

 ドイツの連邦議会は2016年10月、2030年までにガソリン、ディーゼルとも内燃機関だけを動力とする自動車を禁止する決議案を出した。この決議案は議会が政府に要求するだけのもので法的な拘束力はないが、その後のドイツ政府の政策に大きく影響を与えると思われる。

 続いて2017年7月にはフランスと英国が、2040年までに内燃機関だけを動力とする自動車の禁止する政策を相次ぎ発表。さらに スウェーデンのボルボ・カーは2019年以降に発売する全車を電動化すると宣言した。また、中国は2018年以降に電動自動車の製造・販売比率を一定以上に義務付ける「新エネルギー車」規制を導入する見通しであり、インドも同じような政策を進めると見込まれている。

 このような状況を見ると、2015年末にパリで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で合意されたパリ協定を守るために、欧州・アジアの各国が自動車の低炭素化をより強く求めているように思えてしまう。しかし、このような環境維持へ向けた政策は、そのようなきれいごとの建前とは別に、各国の本音としては、その国の産業維持や雇用促進などの国益を優先しているウラがある。

 欧州は、従来はディーゼルエンジンを自動車の動力の主流に置いていた。それが、ガソリンエンジン主体の日本車には欧州市場になかなか食い込めない壁となっていたのだが、2015年に独フォルクスワーゲン(VW)の排気ガス不正事件が発覚すると、ディーゼルエンジン自動車からの消費者離れが予想され、産業の衰退を招いてしまうのではないかとの危機感が生じることになった。これが欧州の自動車の電動化へ舵を切る一つのきっかけとなったと考えられる。

PICKUP[PR]