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FIN/SUM WEEK 2017 レビュー

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保険業を変えるインシュアテック、日本の課題とは?

ワークショップ「インシュアテックのこれから」より

日本では大手が取り組むがスタートアップ企業は少ない

●パネル討論
鈴木氏 日本では大手保険各社がインシュアテックのチームを立ち上げ、第三者と組んでオープンイノベーションを加速している。保険の引き受けや審査業務に人工知能(AI)を活用する試みも行っている。しかしスタートアップ企業の数は少ない。

弁護士の鈴木由里氏(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業) 弁護士の鈴木由里氏(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)

 分野別にみると、個人が直接取引するピア・ツー・ピア(P2P)保険などではスタートアップの進出計画があるものの、他の分野は大手が中心。少額短期保険はインシュアテックに適したニッチ(すきま)市場であり、注目している。

 スタートアップの動きが鈍いのは保険業法など規制の問題か、保守的な商慣習のせいか、技術者コミュニティーと保険業界の接点が少ないせいか、見極めていきたい。

三輪氏 2015年に世界経済フォーラムが、フィンテックの台頭により既存の保険ビジネスがディスラプト(破壊)される可能性が高いとの報告書を出した。これは既存の保険会社にとって、フィンテックはいずれ自分たちの脅威となるのではないかと受け止められ、インシュアテックに対してやや出遅れ感が出てしまったところがあるのではないか。

 他方、最近になって、日本の保険会社もインシュアテックの専門部署やラボ(研究所)を設立し、まずは業務効率化の観点で業務の見直しを図りつつある。保険会社にとって、現在、既存の保険ビジネスのreshape(作り変え)の段階であり、それを踏まえて、これからスタートアップとの協働が増える可能性もあるのではないか。

金融庁の三輪純平氏(総務企画局フィンテック企画調整官) 金融庁の三輪純平氏(総務企画局フィンテック企画調整官)

 規制監督当局の間でも、フィンテックに対して、前向きにとらえる傾向も見られている。今年3月に開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議の共同声明で「デジタルイノベーションがもたらす利益や機会を享受することを確保する」という文言が入ったのもその一例である。今年、保険監督者国際機構(IAIS)もフィンテックと保険監督を題材とした報告書をまとめ、より当局サイドも技術革新に関する知識や動きを早めに吸収して、既存のアプローチとは一歩進んで、フォワードルッキング(前向き)な視点で監督する重要性を示唆した。

 金融庁では、「フィンテックサポートデスク」を設置し、「実証実験ハブ」も設置することとしている。金融庁として、こうした取組みや枠組みを通じ、フィンテックの動きを後押ししていきたいと考える。

ケッセルマン氏 シンガポールには日本の大手保険会社が多くやって来て、現地のスタートアップと連携している。日本国内でも行政当局と対話しながら、イノベーションを起こしていってほしい。

 日本の行政当局がオープンイノベーションを後押しする姿勢は興味深い。インシュアテックに関する実証実験は、スタートアップの利益規模が小さくても早く実施する必要がある。そうしないとチャンスを逃してしまいかねない。

(日本経済新聞社 FIN/SUM事務局)

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