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石澤卓志の「新・都市論」

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東京の地価は「下町の時代」到来か

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

 9月19日に公表された2017年基準地価には、興味深い特徴が多かった。特に、①東京・銀座2丁目「明治屋銀座ビル」の地価がバブル期を超えた、②インバウンド効果によって、大阪・道頓堀の「クリサス心斎橋」など、大阪と京都の地価が大幅に上昇した、などの事項は一般の報道でも大きく取り上げられた。その一方で、あまり話題にならなかった特徴も少なくない。本稿では、その「隠れた注目点」を検討してみる。

工業地の需要が広域で拡大

全国的に倉庫用地の需要は根強い 全国的に倉庫用地の需要は根強い

 今回の基準地価で、全国・工業地は前年比+0.02%と、わずかながら26年ぶりに上昇した。地価の大きな「節目」を示したとも言えるが、工業地が一般に馴染みが薄いせいか、あまり注目されなかったようだ。

 今回の基準地価では、全国・工業地の上昇率10位までのうち6地点を、東京圏の圏央道周辺が占めた。2017年2月26日に圏央道茨城県区間(つくば中央IC~境古河IC)が開通した影響が大きかった。ただし、上昇率上位の地点は、トップの茨城県五霞(ごか)町の「江川工業団地」(前年比+17.9%)のほか、千葉県野田市の「関宿はやま工業団地」(前年比+12.3%、上昇率2位)、埼玉県入間市の「武蔵工業団地」(同+9.6%、同7位)、埼玉県東松山市の「東松山工業団地」(同+8.6%、同8位)、東京都青梅市の「三ツ原工業団地」(同+8.6%、同9位)、茨城県古河市の「北利根工業団地」(同+8.5%、同10位)と、茨城県内だけではなく、東京圏の広域におよんでいる。国土交通省の資料では、茨城県区間の開通によって「広域的なアクセス性が向上した」と説明されている(図表1)。

図表1:圏央道周辺の地価動向 注:図中の番号は、全国・工業地における上昇率の順位。<br>

出所:国土交通省「都道府県地価調査」 注:図中の番号は、全国・工業地における上昇率の順位。
出所:国土交通省「都道府県地価調査」

 地価上昇が広域におよんだ背景には、物流施設(倉庫、配送センター)の立地が外延化した影響も大きかったと思われる。ネット通販の隆盛によって物流施設の需要が高まっているものの、都心近郊では開発用地が乏しくなってきた。

 東京圏では2016年に物流施設の供給量が過去最大を記録した。2018年は、その大量供給の記録が更新される見込みで、特に圏央道周辺には大規模施設の計画が目立つ。全国・工業地の上昇率トップとなった五霞町には2018年10月に「GLP五霞」(延床面積140,000㎡)が完成予定である。また、2022年に完成予定の「GLP相模原」(同約655,000㎡)は、東京圏の物流施設としては最大級と言える。

 通販各社は、即日配達などサービスの品質向上を競っており、全国各地で物流拠点の整備が盛んになっている。今回の基準地価では、仙台港近くの調査地点(前年比+11.6%)が全国・工業地の上昇率3位、2016年3月に湾岸道路の供用が開始された沖縄県・豊見城市(とみぐすくし)の調査地点(同+11.0%)が同4位、新名神道路の一部が開通した京都府の宇治田原町(同+10.8%)と城陽市(同+10.0%)が、それぞれ同5位・6位となった。

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