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ビッグデータとコンプライアンス

郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

 高度な情報通信技術の進展やデジタル・ネットワークの発達などにより、膨大なデータ(ビッグデータ)の生成・収集・蓄積が可能になった現在、ビッグデータの利活用をいかにして促進し、新たな付加価値を創出していくかが、産業競争力強化の観点から、日本社会にとっての重要な課題になっている。

 政府は「日本再興戦略」改訂2015において、IoT、ビッグデータ、AI(人工知能)による産業構造・就業構造変革の検討を主要施策の一つとして掲げ、情報技術の革新を、経済成長や健康長寿社会の形成、さらには社会変革につなげていくための取り組みについて検討を続けている。

「ビッグデータは誰のものか」

 「ビッグデータ」という言葉が初めて注目を浴びたのは、2013年6月、JR東日本が電子マネーのSuicaに記録された乗降データ(以下、スイカ・データ)を、利用者には無断で、日立製作所に有償で提供していたことが明らかになり、利用者から大きな反発を招いたときではないだろうか。

 この時私は、ビッグデータの利活用が今後の経済社会を劇的に変える可能性とそれに関する根本的な問題を、「ビッグデータは誰のものか」というブログ記事(2013年9月13日)で指摘した。

 この記事に書いたことも含め、ビッグデータが「組織が社会の要請に応えること」という意味のコンプライアンスをめぐる環境そのものにも劇的な変化を生じさせる可能性を、講演などの場で指摘してきた。

 私が、ビッグデータとコンプライアンスの関係について述べてきたことの要点は、以下の通りだ。

(1)旧来の法体系の枠組みを超える情報環境

 情報の価値が一層大きくなり、世の中が情報を中心に動いているとすら思える状況において、ビッグデータの活用をめぐって生じる問題は、有体物が価値の中心だった社会を前提とする旧来の法体系では解決し得なくなってきている。

 情報という無体財産に関しては、旧来の私有財産制が観念するような、物理的・直接的な支配・管理は困難である。情報の流出・拡散は不可逆的に生じ、原本と複製の区別や情報流出元の特定は極めて難しく、原状回復も事実上不可能であり、返還請求という手段もあり得ない。

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