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フィンテック キーパーソンに聞く

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ブロックチェーン技術で「ソサエティー5.0」へ

日立製作所 事業企画本部 金融イノベーション推進センタ長 長稔也氏

 フィンテック(金融とテクノロジーの融合)をテーマとするグローバルイベント「FIN/SUM WEEK 2017」の開催を機に、参加団体のキーパーソンに注目テーマや最新動向、新分野を切り開く意気込みを聞いた。日立製作所 金融イノベーション推進センタ長の長稔也氏は、ブロックチェーン技術はまだ発展途上だが、金融のみならず製造業など社会全体を変革していくと強調する。

「ブロックチェーン」を含む4領域の事業に軸足

 全国銀行協会は9月中旬、複数の参加者が取引履歴を共有し認証し合う「ブロックチェーン」(分散型台帳)プラットフォーム作りのパートナーに、日立製作所、富士通、NTTデータ、bitFlyer(ビットフライヤー、東京・港)の4社を選定したと発表した。10月中にも選定した4社のプラットフォームが稼働し、全銀協に加盟する各行はこの中からプラットフォームを選定し、ブロックチェーンを使った決済や送金サービス、本人確認などの実用化実験を進める。選定4社に入ったことは、日立のブロックチェーン開発が実を結んだ1つのケースといえる。

日立製作所 金融イノベーション推進センタ長 長稔也氏 日立製作所 金融イノベーション推進センタ長 長稔也氏

 日立の中で、これまでフィンテック関連は「ソリューション企画部」が担当していたが、2016年に現在の「金融イノベーション推進センタ」に組織を変えた。同時に「オープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」「AI(人工知能)」「生体情報を活用した認証・セキュリティ」「ブロックチェーン」の4領域に軸足を移している。

 その1つの柱が、ビットコインなど仮想通貨システムを支える中核技術であるブロックチェーン。通貨の送金や受け取りなど取引のデータを暗号化した情報のブロックを鎖(チェーン)のようにつないで保管する仕組みで、中央管理型の仕組みよりも軽くて透明性が高い(データの改ざんが難しい)という特徴があり、スマートコントラクト(取引を自動で実行する技術)による業務連携もしやすい。

 「ブロックチェーンと言うとビットコインを思い出す人が多いのですが、ブロックチェーン自体は仮想通貨だけに使われる技術ではありません。例えば、病気で入院して支払いをするまでを考えてみましょう。病院は医師の診断と治療内容からレセプト(医療報酬請求書)を作成します。このレセプトを基に、患者は加入している健康保険組合や医療保険に入っている保険会社へ手続きをしなくてはなりません。病院、健保組合、保険会社が別々なために、煩雑な手続きがあるわけです。ブロックチェーンを使えば、これらの医療関係機関や会社を結び付けて簡単に処理手続きを進められます。いわば便利なツールなのです」

 1961年栃木県生まれ。早稲田大卒後、日立製作所入社。証券業界向けシステムエンジニアとして勤務していたが、90年に米ニューヨーク大経営大学院に社費留学し、経営学修士号(MBA)を取得。帰国後はコンサルティング部門、日本興業銀行出向(海外現地法人のサポート業務)、復帰後はCRM(顧客情報管理)ソリューション開発などを手がけた。2001年シティバンクにヘッドハンティングで入行、個人金融本部でバーチャルバンキングやCRMの業務を手がけた。ユニークなのは、04年に古巣の日立に復帰したこと。

 「日立の中でも出戻りはあまり前例がないでしょう。興銀、シティバンクでの経験から銀行・金融業界のメンタリティーが理解できるようになりました。彼らはどこを見て、どう判断するのか、そのツボが分かります。だからフィンテックに関わって銀行・金融業界をお手伝いできるのが楽しい」と笑みを浮かべる。

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