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FIN/SUM WEEK 2017 キーパーソンの思い

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1800兆円、「資産形成民主化」促すかフィンテック

QUICK資産運用研究所長・北澤千秋氏に聞く

 フィンテック(金融とテクノロジーの融合)をテーマとするグローバルイベント「FIN/SUM WEEK 2017」で、金融情報会社QUICKの社内研究機関であるQUICK資産運用研究所が19日、新丸ビルで資産運用討論会を開く。北澤千秋所長は1800兆円にのぼる個人金融資産の半分以上が、預貯金など動かぬ資産になっていると指摘。フィンテックが壁を突き崩し、資産運用が一般の人々に普及し特殊なものではなくなる「資産形成民主化」を促す起爆剤になれるか、期待を寄せる。

「フィンテックが資産運用変える」~多士済々4氏が19日討論会

QUICK資産運用研究所長 北澤千秋氏 QUICK資産運用研究所長 北澤千秋氏

 QUICK資産運用研究所は2016年4月に産声をあげたばかりの組織。資本市場の健全な発展に寄与し、金融リテラシーの向上や資産運用への貢献などを目的として社内に発足した。QUICKが中立公正な情報会社として金融・資本市場に長く関わってきたこともあり、豊富なデータ蓄積やノウハウを生かして「市場の分析、インフラデータ、投信情報発信からビジネス支援まで新しいナレッジを生み出し、金融と投資家を結ぶハブ役を果たしたい」(北澤所長)と話す。

 これまでも年2回程度、QUICKの顧客を対象に討論会を開いていたが、今回はフィンテック関連の一環ということもあり、より広く参加者を招き、資産運用のあり方や問題点を提起したい考え。テーマは「フィンテックが資産運用を変える」。パネラーには4氏が参加する。「ひふみ投信」を運用するレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長、家計簿アプリを手がけるマネーツリーのポール・チャップマン代表、クリエーターとして活躍するロフトワークの林千晶代表、少額投資非課税制度(NISA)の制度設計などで主導的な役割を務める金融庁の油布志行参事官。多士済々で「個性豊かな方々の意見がぶつかることで新たなアイデアが生まれるでしょう」(同)と期待を寄せる。

制度後押しと技術革新で「ツンドラ資産」融解へ

 北澤所長は「一般の人々にとって資産運用は、始めたいが怖い、だまされる、などネガティブなイメージがつきまといます。ハードルは高いがこの壁をフィンテックが壊し、またそうした流れを作っていけるのではないでしょうか、出席されるパネラーに議論してもらいたい」という。この根底には、個人金融資産が1800兆円もあるにもかかわらず、半分以上が現預金のまま眠っている問題意識がある。

 「この資産はツンドラ(極北域の凍土・荒地)のように固まったまま動きませんが、1%のリターンをもたらせば18兆円の資産を生みます。家計にとっては老後生活の一助になり、国には税収増を、そして企業には消費増を通して収益への寄与をもたらします。ポートフォリオのリターンが高まるのは、得にこそなれ誰の損にもなりません。1800兆円をどう揺り動かすかは研究所としてのテーマでもありますが、今回はフィンテックの切り口から語り合いたい」(同)

 日本は過去、長期間デフレが常態化し、給料が増えない中で社会保障費が増えて可処分所得が減ってきた歴史がある。バブル崩壊とその後の長期の株価低迷で多くの人は資産運用の成功体験をもてなかったこともあるし、金融機関のイメージも決してよくはない。様々な要因が複合的に重なり、マネーが動きにくかった。

 北澤所長は「いまは違います。1800兆円という日本最後の宝を国が政策面から動かそうとしています。NISAのほか、厚労省も個人型確定拠出年金(DC)=iDeCo(イデコ)=を送り出しました。制度面からの後押しが本格的に始まったのは今回が初めて。この大きなチャンスを逃してはいけません。フィンテックによって資産運用の世界へアクセスしやすくなる環境も整いつつあります。制度の後押しに技術革新が加わり、マネーの構図・流れを大きく変えていくのではないでしょうか」と可能性の高まりを指摘する。

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