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利用者が気づかず使える銀行サービス目指す

住信SBIネット銀行 FinTech事業企画部長 吉本憲文氏

金融インフラ提供し、スタートアップと協業

 こうした社内体制を背景にして実現したAPI接続の一例が、ネストエッグ(東京・千代田)の自動貯金アプリ「finbee」(フィンビー)において2016年12月に始めた提携サービスだ。住信SBIは、預金者に対して代表口座とは別に、特定の目的のために貯金箱のように使える目的別口座を提供している。住信SBIの口座をfinbeeと連携させることにより、たとえばデビットカードで350円の買い物をしたときに、あらかじめ設定しておいた基準額500円との差額150円を代表口座から目的別口座に自動的に振り替えて「おつり貯金」ができる。また、スマホの万歩計機能を使って、1日1万歩以上歩いたら1000円貯金をする、といった使い方も可能だ。

「銀行は役所と同じように『行かなければいけないところ』といった言われ方をよくされますが、これを変えたい」 「銀行は役所と同じように『行かなければいけないところ』といった言われ方をよくされますが、これを変えたい」

 吉本氏は「扱うお金が小口だと銀行だけではメーンの業務にしにくいが、そういった分野を主戦場とする企業に銀行のシステムをうまく利用してもらえれば、いろいろな活用方法がある領域だと思います」と期待を込める。

 口座間の振替時には銀行側で預金データの更新が必要となる。それまでのAPI連携は口座残高や入出金明細の照会に限定した「参照系API」だったのに対し、データ更新を伴う「更新系API」は不正利用による資金流出リスクなどへの対処が欠かせない。住信SBIは、目的別口座の仕組みを活用することで、日本初の更新系API提供を達成した。

 住信SBIと提携したマネーフォワードやfreeeはその後、ほかの銀行ともAPI接続を始めている。他行の追い上げは気にならないのか。吉本氏は「先頭ランナーは後続が誰もついてこないと『道を間違ったか』と不安になるもの。皆が一定水準まで出そろって、業界全体が盛り上がったほうが、新規分野の土台をつくるうえでもいいのです」と答える。そのうえで、自らは革新性や利便性の面でさらに前進する方策を考えればいい、というわけだ。

 吉本氏がさらにその先に見据えるのは「インフラとしての銀行」だという。「銀行は役所と同じように『行かなければいけないところ』といった言われ方をよくされますが、これを変えたい。銀行が汎用性の高い金融インフラを提供し、サービス事業者と協業することで、利用者が知らず知らずのうちに銀行機能を使い、満足な金融サービスを受けられるようになったらいい。日本発で世界標準になるような技術やサービスが出てきてほしいし、私たちもその一助になれればと考えています」(吉本氏)。

 休日はオートバイでツーリングに出かけるのが楽しみで、ほぼ全都道府県を走行したという吉本氏。日ごろはネットの世界にどっぷりとつかりがちなのでなおさら、いろいろな土地の空気を感じながら、現地の人たちと話をする大事さを意識するという。かつて訪れた神奈川県・湯河原では、駅前のコンビニに設置された地元銀行のATMで住信SBIのキャッシュカードを使うことができず、「『まだまだだな、ネット銀行』と思いました」(吉本氏)。インターネット専業銀行として知名度があったとしても、そもそもインターネットを使わない人にどうやってリーチしていけばいいか、と考えを巡らせる。

 住信SBIは、FIN/SUM WEEK期間中、展示体験ゾーン「FIN/SUM ランド」にブースを出展する。吉本氏は「銀行サービスが今、こんなことをしていて、こんなふうに便利になっている、ということを、通りがかりの方を含めて広く見ていただければ」とリアルの場でのアピールに意欲をみせる。

(日本経済新聞社FIN/SUM事務局)

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