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自動運転時代、ビジネスの主役は?

第3回 名古屋大学 COI 未来社会創造機構 客員准教授 野辺継男氏に聞く

――完全自動運転車は、公共性の高い交通手段という位置づけなのですね。

 その通りです。その上で、完全自動運転の特性を生かした、全く新しいタイプの移動サービスの登場が重要になります。例えば、最近宅配サービスの再配達が問題になっていますが、宅配を受け取る利用者が帰宅の際に、最寄りの駅から自宅まで利用する完全無人タクシーに宅配事業者が荷物を事前に載せておけば、その利用者が家の中まで持ち込んでくれ、いわゆる"ラスト50フィート問題"も解決します。さらにこの場合、宅配の輸送費用を事業コストとして賄っているわけですから、人が乗る運賃をさらに低減可能で一石二鳥です。

 長距離移動に完全自動運転車を活用するサービスも出てくるかもしれません。例えば、東京に住んでいる人が朝9時に大阪で開かれる会議に出席する場合、今ならば新幹線や飛行機で前日に移動し、前泊する方も多いでしょう。今後は完全自動運転車に夜中に乗り込み、高速道路を寝ながら移動するようなことも可能になるかもしれません。また、それにより客を奪われかねないビジネスホテル事業者は、今は立地型が当たり前であるホテルを移動型ホテルに転換するといった、全く新しいサービス事業を生む可能性もあります。

サービス企業が得る絶大な発言力

――自動運転ビジネスの中心がモビリティーサービスになると、クルマを買う人が減りそうです。自動車市場は縮みませんか。

 むしろ市場や生産規模は拡大する可能性があります。現在、個人が所有するクルマは、一度新車として市場に出ると転売されながら約13年間存在します。これほど長持ちするのは1日平均約1時間(4%)しか乗らないためです。モビリティーサービスに使う自動運転車では、稼働率が50%以上、つまり個人所有のクルマの10倍以上になります。すると、クルマのライフサイクルが2~3年になるという想定もあり、通常のクルマが市場に約13年存在する間に4~6回生産することになるわけです。さらに、移動の利便性が高まればクルマが利用される新たな需要が追加されるので、市場規模も大きくなり、生産量も増える可能性があります。

――ライフサイクルが4分の1ですか。市場の新陳代謝が激しくなり、自動車メーカーは忙しくなりそうです。

 完全自動運転車の場合、クルマのライフサイクルの短縮とともにリプレース、リサイクルやリユースなどを含め、クルマの製造プロセスが大きく変化します。さらに、それらの回収やメンテナンスに対する考え方や事業体制も大きく変える必要があります。こうしたことが、以前パソコン産業が急拡大する直前に起きた例があり、国際的にそうした製造形態により早く移行できた企業による市場寡占化が進みました。同様のことがクルマ産業でも起こる可能性があります。

 新車の開発も大きく変化することになります。しかし、自動車メーカーが自発的に新車のコンセプトを決定できなくなる可能性もあります。この点こそ、モビリティーサービスへの転換に向けて最も重視すべき点です。

 個人に販売するクルマを企画するとき、自動車メーカーの多くは、将来の人口動態や流行を予測し、その理想を具現化し消費者に提案します。ところが完全自動運転では、モビリティーサービスを提供するモビリティー事業者が、利用者の日々のニーズを分析しクルマそのものやサービス内容を企画開発する能力を高めます。そして、自動車メーカーはモビリティー事業者の指示の下、粛々とクルマを作るだけの立場になる可能性があるのです。

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