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自動運転時代、ビジネスの主役は?

第3回 名古屋大学 COI 未来社会創造機構 客員准教授 野辺継男氏に聞く

 自動運転車が自社以外の企業、しかも他業界の企業の手で実現されることは、自動車メーカーにとって看過できない事態です。完全自動運転になると、自動車ビジネスの構造が一変し、技術や製品の開発で主導権を取れなくなる可能性があります。そうした可能性に気づいた欧米の自動車メーカーは既存自動車ビジネスの危機ととらえ、ビジネスモデルの急展開に走っています。

 さらに米国では政府もこうした自動車産業の変革期に急速な動きをみせています。9月6日、米国議会下院で、超党派の支持を得て自動運転法(Safely Ensuring Lives Future Deployment and Research In Vehicle Evolution Act)と呼ばれる法案が通りました。今後上院を通過し大統領の署名を得れば、人が全く運転に関与しない完全自動運転車とそれを利用するモビリティーサービスの商用試験が今後1、2年で全米に急拡大する可能性があります。この背景には、完全自動運転というクルマとICTの融合を絶好の機会と捉え、もう一度米国の自動車産業を世界一にしようという期待があると見られています。

価値の源泉はものづくりからサービスへ

――自動運転車の実現によって、自動車ビジネスのかたちはどのように変わるのでしょうか。

 自動運転の実現に向け、当面2つのイノベーションの方向性が共存します。多くの人が個人で所有している自家用車の自動化が徐々に拡大する「継続的イノベーション」と、モビリティー事業者が完全自動運転車を保有し、ユーザーに移動を提供する「破壊的イノベーション」です。

 完全自動運転になるとドライバーがいなくなります。すると自動車ビジネスが、ドライバーにクルマを買ってもらう売り切りビジネスから、人やモノに移動手段を提供するサービスビジネス(モビリティーサービス)へと移行します。この「破壊的イノベーション」が最近急激に重要性を増しています。

 特に2017年7月にグーグルがレンタカーサービス大手のエイビスと提携し(独占的ではない)、並行してリフトが競合する複数の企業とパートナーシップを拡大していることが注目されています。こうしたこれまでの事業範囲を超えた、全く新しい合従連衡を形成する動きが欧米では毎日のようにニュースになっています。

――個人にクルマを売るビジネスではなくなるのですか。

 なくなる訳ではないと思います。今後、個人が所有するクルマにもより高度な自動運転機能が浸透するものと思われます。ただし、最後の最後にあくまでもドライバーが責任をもって運転し、必要に応じて選択的に自動運転に切り替えて使うといった位置づけになり、そうしたクルマを個人に売るビジネスは引き続き残るでしょう。

 スポーツカーのように人が真剣に運転したり所有したりすることに魅力があるクルマはより高いニーズを引き出すでしょうし、途上国などでこれからクルマの所有が発生する地域での販売は拡大するでしょう。人口密度が低くモビリティーサービスが成立しにくい市場では、引き続き個人にクルマを売ることになるでしょう。

 一方、完全自動運転を利用したモビリティーサービスは、もちろん一部個人所有のクルマを置き換える可能性があります。しかし、これまでには無かった全く新しい市場を追加的に形成するという視点が重要です。例えば通勤や長距離移動には大量輸送の電車やバスを用い、最寄りの駅から家までのラストワンマイル(約1.6Km)の範囲で完全自動運転車をタクシーの代わりに利用するような新しい移動手段を提供することになるでしょう。もちろん高齢者のライフラインにもなります。現在、タクシー事業はコストの約7割が人件費です。完全自動運転車ならば、運賃を大幅に下げることができ、利用も拡大するでしょう。

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