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泉田良輔の「新・日本産業鳥瞰図」

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三菱UFJのフィンテック新会社、狙いは異業種対抗

GFリサーチ 泉田良輔氏

 さらに将来、銀行はますます非金融業との激しい競争にさらされるだろう。法人間の決済における銀行の優位性はあるだろうが、一般消費者向けの決済では運輸業者や小売業者同士の決済システムに対する競争がますます激しくなる。特にリアルな実店舗で商品(モノ)やサービスを取り扱っている小売業や運輸業が「接点」という観点では有利だ。

 前出のアマゾンがEC(電子商取引)事業者でありながら「Amazon GO」という名称で無人の決済インフラを備える実店舗を展開しているのは、このコンテキストとそれるものではない。さらにアマゾンは米ホールフーズのような既存スーパーマーケットの買収も行っている。

 こうしてみると金融機関が決済を切り口に一般消費者と接点を持とうとするのは、時間とともにハードルが高くなっていくだろう。金融機関主導の一般消費者向け決済システムは成長性の高いIoTの領域においても、よほど力を入れないと成功しないように考える。

みずほフィナンシャルグループもフィンテックに注力

 みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ銀行は2017年7月10日にベンチャーキャピタルのWiLグループと新会社Blue Labの設立を発表した[10]。発表時点では、みずほ銀行だけではなく、伊藤忠商事、損保ジャパン日本興亜、第一生命、農林中央金庫、丸紅、三井住友信託銀行などが株主として参加する予定とされている。

 Blue Labの具体的な狙いの例として記載されているのが、決済プラットフォーム構築、AI(人工知能)やビッグデータ活用による事務作業自動化のためのソフトウエア開発、サプライチェーンマネジメントやトレードファイナンスにおける業務効率化を目的としたブロックチェーンの商用化――である。Blue Labはフィンテック領域だけではなく、IoT領域を含んだ新たなビジネスモデルでも早々と事業化を目指している。

 Blue LabとJDDは同列で比較すべきではないかもしれないが、これまで見てきたように両社のいずれもが決済領域を対象としている。ただ、両社で異なるのが株主構成である。JDDの場合は、地銀とは業務提携に止め、MUFGが100%保有する。それに対して、Blue Labは7月発表時点で、みずほ銀行をはじめとした生保、損保、商社などが株主になっていくとされている。


参考情報)
[1] 『Japan Digital Design 設立について』(株式会社三菱UFJ フィナンシャル・グループ)
[2] 『IoTで自動発注・決済 三菱UFJがシステム開発』(日本経済新聞 電子版)
[3] 『決済に関する調査』(楽天リサーチ)
[4] 『 2017年3月期決算説明会』(東日本旅客鉄道会社)
[5] 『6,373万人の会員基盤』(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)
[6] 『国内IC型電子マネー初 「WAON」の年間利用金額が2兆円を突破!』(イオン株式会社)
[7] 『セブン&アイの 電子マネー『nanaco』はおかげさまで10 周』 (株式会社セブン・カードサービス)
[8] 『入金(チャージ)』(東日本旅客鉄道会社)
[9] Amazonギフト券チャージタイプポイント付与率』(アマゾン)
[10] 『新たな事業創出を目的とする合弁会社設立について』(株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社みずほ銀行、WiL LLC.)


泉田良輔 (いずみだ りょうすけ)

 GFリサーチ代表。個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)編集長、および株1(カブワン)投信1(トウシンワン)の監修も務める。それ以前はフィデリティ投信・調査部にて日本のテクノロジーセクターの証券アナリスト、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネージャーとして従事。慶応義塾大学大学院卒。著書に『銀行はこれからどうなるのか』『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』。東京工業大学大学院非常勤講師。

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