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泉田良輔の「新・日本産業鳥瞰図」

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三菱UFJのフィンテック新会社、狙いは異業種対抗

GFリサーチ 泉田良輔氏

 第2に注目したいのは、業務提携を予定する地銀・地銀グループの名前を見て驚いたのだが、フィンテックに対してこれまで独自路線を進むと思われていたところも巻き込んでいることである。 筆者としては、今後の地銀再編の流れのなかで、横浜銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループとふくおかフィナンシャルグループの動向を注視していた。それだけに、今回のJDDの取り組みの発表でふくおかフィナンシャルグループは興味深いアクションを行ったと感じる。

 預金残高で見ると、11.6兆円の千葉銀行もふくおかフィナンシャルグループに匹敵するが、千葉銀行は三菱東京UFJ銀行と株式の持ち合いをしているため、業務提携先として名を連ねるのは自然だろう。それに対して、ふくおかフィナンシャルグループは三菱東京UFJ銀行が大株主になっているわけでもなく、預金残高の合計値も13.2兆円と地銀グループとしては大きい。

 ふくおかフィナンシャルグループが業務提携先に名を連ねたこともあり、JDDと業務提携を予定する32の地銀・地銀グループの預金残高の合計は156兆円にも上る。三菱東京UFJ銀行の預金残高が171兆円であることを考えれば、三菱東京UFJ銀行に迫る規模の地銀・地銀グループをJDDの提携先に巻き込んだことは意識しておいてよい。

 JDD設立のメリットはMUFGと、地銀・地銀グループの両方にある。

 MUFGのようなメガバンクグループから見た地銀・地銀グループの魅力はやはり、地域の企業および預金者との接点の強さであろう。今回のJDDの発表内容は冒頭に紹介したとおりだが、その中に「フィンテック」という言葉は見当たらない。ただ、ここでは仮に銀行業高度化の中にフィンテックを含めるとするとして話を進めたい。

 今後、フィンテックの進展によって地域の企業および預金者の預金先が変化する可能性は高いと見ているが、預金の集金チャネルを全国でさまざまな世代に対してきめ細かく確保できているかどうかというのは出発点として重要である。そもそも銀行業にとって預金が欠かせないものであることは言うまでもない。

 また、地銀・地銀グループからすれば、フィンテックの進展によって、決済がより手軽に行える金融機関へ預金が移動するなどで、自行および自グループの預金が減る事態は避けたいところであるが、フィンテックの投資対効果はわかりにくい。フィンテックへの取り組みが業務提携で行えるなら、メリットは大きいと思うところは多いだろう。

なぜJDDは資本金30億円を予定するのか?

 第3に注目したいのは、JDDの資本金が30億円と大きいことである。この金額はJDDにかけるMUFGの意気込みの大きさを物語っている。JDDはMUFGの100%出資子会社であり、日本の代表的なメガバンクグループからすれば30億円という金額はたいしたものではないのかもしれないが、フィンテックのベンチャーと比較すれば大きい。

 以上のように、32の地銀・地銀グループの参加、フィンテックで独自路線を進む大手地銀グループの参加、さらにこの30億円という資本金を考慮すると、JDDの設立は、資金量のあるメガバンクがフィンテックに乗り遅れまいとする地銀・地銀グループを支援するといった「守り」の動きには見えない。フィンテックによって将来現れる市場に、より積極的に取り組もうとしている「攻め」の動きと見るのが妥当だろう。

 JDD設立発表時に、日本経済新聞社は「(今回の取り組みが)目指すのはIoT(モノのインターネット)に対応した決済システムづくりだ」と報じている[2]。IoTの決済は高い成長が見込まれる市場の1つである。同記事は、今回報道されたJDDの決済システムのユースケースとして、家電や自動車メーカーと組んでいく状況に言及するなどの具体的なシーンに踏み込んでいる。

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