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経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

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ケース32:法務部って何するところ?必要なの?

弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

今回の悩める経営者:斎藤工業株式会社 代表取締役社長 斎藤さいとう拓司たくし(35歳)
相談内容

 先生、法務部ってどうやって作るんですか? つか、法務部って何やるんですか?もう、何が何だかわかんなくなっちゃって。ほら、親父が脳梗塞で倒れて、オレが親父の会社を継いで、1年じゃないすか。ようやく新しい環境に慣れ、楽しい社長ライフをしていたところに、しち面倒なことが起こっちゃって、困っているんです。

 メインバンクからウチに押し付けられた使えねえくせに口うるさいのがいるじゃないですか。韮泉(にらいずみ)政(せい)っての。今度取締役になって、総務とか経理とか面倒な割に売り上げに関係ないところを全部みることになったんですよ。そしたら、「この会社には法務部がありませんな。コンプライアンス的に問題ですな」から始まって、「法務部を作らにゃなりませんな。そうでないと、こりゃ、エライことになる」、とか言い出したんです。

 先生もご存知のとおり、我が社は上場しているわけでもありませんし、法律や契約書や揉め事や裁判沙汰は、先生もご存知の久保田って総務の若手にやらせています。法学部ではなく、商学部卒ですが、宅建士の資格も持っているし、素直で勉強熱心で、文書も早い。難しい契約書とか、大きな取引とか、変わった案件・新規案件は、その都度、先生のところに行っては教えを請い、それで、大過なくやってきた。久保田と先生ところの事務所がちゃんと連携取れていれば、別にいいじゃないですか。

 「久保田と鉄丸先生の事務所が二人三脚で、法務処理やってくれてます、これが我が社の法務部みたいなもんです。それでいいじゃないですか。売り上げも低迷しているのに、そんなよくわからないコストなんか、かけられない」と言ったら、まあ、もう、韮泉のやつ、ブチ切れ。「甘い」とか、「認識不足」、とか「ブラック」とか「ダーティー」とか、「法令遵守意識が足りない」とか。事あるごとに、コンプライアンスとかって呪文を唱えだしたんです。

 韮泉の考えも一応聞いてみたら、自分の知り合いの息子が最近、弁護士になったばかりだが、いい就職先ないから彼を社内弁護士兼法務部長として迎え入れ、あと銀行から50代の管理部門の人間を3人とかと計5人で法務部を立ち上げるって話なんです。韮泉の立てている予算は、べらぼうな額で目がクラクラしました。そんだけ予算かけるわけだからメリットはあるかな、と思って、「じゃあ、社内弁護士いるんだったら、鉄丸先生のところの契約もやめて、全部外注から内生に切り替えて、コストダウン図るの?」って聞いたら、そんな危険なことはしない、とかって言い出す。

 「社内弁護士といっても、弁護士になったばかりだし法廷経験があるわけではないし、ましてや、実務の細かいことは知るわけがない。外部の顧問弁護士と、リーガルマインドという共通の言語で、協働し、グローバルな視点で、戦略的な法務体制を構築する」とか、もう支離滅裂。「今と全く変わらないし、カネがかかるだけで、意味ねえじゃん」って言ったら、目が血走って例の「コンプライアンス」呪文を唱えだす。最初の話に戻るんですが、法務部って絶対必要なの? 我が社のような、零細とはいわないが、上場もしていない中小企業でもないとアウトなの? もう何がなんだかわかんないですよ。

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