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フィンテック キーパーソンに聞く

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5枚の名刺で銀行の「縛り」解く

みずほフィナンシャルグループ シニアデジタルストラテジスト 大久保光伸氏

 フィンテック(金融とテクノロジーの融合)をテーマとするグローバルイベント「FIN/SUM WEEK 2017」の開幕を前に、参加団体のキーパーソンに注目テーマや最新動向、新分野を切り開く意気込みを聞く。みずほフィナンシャルグループのデジタルイノベーション部 シニアデジタルストラテジスト、大久保光伸氏はスタートアップ企業のアイデアを取り入れ、業界の枠を越えて新規事業を生み出していくという。

業界の枠を越えてオープンイノベーションを推進

 「銀行の外にいることが多くて、名刺は今度で5枚目です」――。8月21日、東京・六本木の街を見下ろすビルの40階で、大久保氏の新たな活動拠点が事業を開始した。今回加わった肩書は、Blue Lab(東京・港)のCTO(最高技術責任者)だ。

みずほフィナンシャルグループ デジタルイノベーション部 シニアデジタルストラテジスト 大久保光伸氏 みずほフィナンシャルグループ デジタルイノベーション部 シニアデジタルストラテジスト 大久保光伸氏

 Blue Labは、みずほ銀行と日米に拠点を置くベンチャー投資・育成会社のWiL(カリフォルニア州)を中心に設立。伊藤忠商事、第一生命保険、農林中央金庫なども参画する。スタートアップ企業などのアイデアを取り入れ、業界の枠を越えて新規事業を生み出していくオープンイノベーションの場と位置付ける。みずほにとっては、「保守的」「減点主義」といった縛りの強い銀行本体から離れたところで、リスクを取りながら試行錯誤を実践するレギュラトリー・サンドボックス(規制の砂場)のような存在だ。

 「アイデアの評価や研究開発を銀行の中でしようとすると、さまざまな社内手続きに時間を取られがちです。また、新規案件が銀行の既存業務と競合する可能性があると、検討すら思いとどまることもあり得ます。それなら、こちらの『出島』のほうでコンセプトを固めて銀行に持って行く。最終的には、銀行全体の収益性などをみて判断すればいいのです」と大久保氏は説明する。

 Blue Labは、すでに米民泊大手Airbnbとの業務提携を発表し、日本での民泊事業の普及や観光を軸にした地方活性化に向けて、2018年度からのサービス提供を予定している。ほかにも、検討対象は金融分野に限らず、新規事業のアイデアの「卵」を20個ほど温めているという。

 「私のプロジェクトの中では、子育てに関するシェアリングエコノミーも考えています。ベビーシッターを頼むとき、銀行の持っている情報を活用して本人確認を行うといった発想です」(大久保氏)。自身も3人の子育てに苦労した時期があり、外国企業の日本誘致のための環境整備という観点からも、ぜひ成し遂げたいと意欲をみせる。

 Blue Labから北へ3キロ。大久保氏が携わるオープンイノベーションの場が、東京・大手町にもう1つある。三菱地所と電通グループが運営するフィンテックベンチャーのためのコワーキングスペース「FINOLAB」だ。みずほはFINOLAB内にラボ施設「Mizuho Creation Studio」(MCS.io)を設け、FINOLABの入居企業などとの協業を2月から本格的に始めている。

 「Blue Labとの違いは、銀行のビジネスなのか、それ以外かということ。MCS.ioでは銀行API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)をメーンに、実証実験で洗い出した課題を技術で補完する仕組みを開発し、APIエコシステムをどんどん広げています」(大久保氏)。

 銀行APIは、銀行のシステムを外部のサービスと接続するためのプログラムだ。銀行がAPIを公開することで、フィンテックサービスを提供する事業者が開発を加速させることができる。サービス利用者も、自らが使っている銀行のIDやパスワードを事業者に知らせずに、新規サービスを利用できるようになる。

 さらに、APIとIoT(あらゆるモノをネットにつなげる技術)を活用した実証実験の第1弾が「手ぶらで決済」だ。Liquid(東京・千代田)が開発した指紋認証センサー付きレジスターを利用し、ICカードなどを使わずに振り込みや残高照会を可能にする仕組みづくりを目指す。

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