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成功企業に学ぶ 実践フィンテック

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フィンテックにおける金融業の実践的戦略とは?

SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長 北尾 吉孝氏

金融生態系と戦略上の優位性

 こうしたプロセスを順次あるいは並行的に行っていくことができるのは、SBIにはベンチャー企業への投資をし、それら投資先企業を育成することを主たる業とするSBIインベストメントという子会社が傘下にあるからです。SBIの金融サービス事業の生態系とSBIインベストメントとの組織的な連関性こそが戦略上の強力な優位性をもたらしているのです。

 またSBIインベストメントは単なるベンチャーキャピタルではなくインターネットとバイオテクノロジーの領域を主な投資領域にしており、そうした面での経験豊かな専門家を多く抱えているということが特徴です。専門家が発掘した投資対象に適切な価格で出資をし、株主として投資先企業が新規公開できるようなレベルまで成長するのを様々な面でサポートするわけです。SBIの最大のサポートは投資先企業の技術・サービス・製品を、対価を支払ってSBIの企業生態系の構成企業で利用するということです。これにより投資先企業の業績向上に直接的に貢献できるのです。SBIの生態系は銀行、証券、保険などすべての金融サービスを網羅的に提供しているので、投資先企業を無理なくサポートできます。

 また、多くのフィンテック1.5や2.0に属する企業は前述したようにスタートアップベンチャー企業であり、事業基盤は極めて脆弱です。したがって、多くのベンチャー企業が良い要素技術を持ちながら、それを収益化できないで消えていくというのが、残念ながら常態なのです。

 SBIではこのような状況をベストなかたちで解決できないかと長らく考えてきました。すなわち、SBI、そしてベンチャー企業にとって、なおかつ最も大事なグループ企業の顧客にとって良い、「三方良し」の方策とはどのようなものか、という課題です。

 私はそれに対し、①金融サービス事業の企業生態系の構築、②ベンチャー投資機関の設立およびその投資先企業との連携――この連携には①の企業生態系を構成する各社と協働での技術開発とその①による利用策の検討や実証分析を含んでいます――そして③投資先企業の要素技術の導入による生態系を構成する各社および投資先企業の利益拡大への応用というものを考えています。

 この方策には様々なやり方があります。例えば、複数のベンチャー企業の有する要素技術を組み合わせるやり方。一つの技術では金融商品として使用するのは難しいものの、組み合わせることにより、有力な商品を創出できるケースがあります。ベンチャー企業も参加したプロジェクトチームのメンバーの英知を結集し、SBIがその組み合わせを作るのです。また、新技術の導入コストをいかに下げるかも非常に重要です。多くの戦略的パートナーが同じ技術やアプリを使って開発した金融商品を共に拡販することで、最大の導入コストの削減が可能となるのです。そのためにSBIは多くの地域金融機関と戦略的パートナーになろうとしています。そして、新技術導入や商品開発のコストをパートナーと共に負担し合い、結果として新技術を導入しやすくするのです。

 こうしたことは近年オープンイノベーションといわれているイノベーションの方法論であり、かっこいい言葉ですが、現実にはそう簡単なものではありません。誰かがアーキテクトにならないとダメです。私はこれを演出する人あるいは組織を私の造語で「仕組みのアーキテクト」と名付けています。私のビジネス戦略は、簡単にいえば勝つための仕組みを緻密に創り上げることなのです。

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