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フィンテックにおける金融業の実践的戦略とは?

SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長 北尾 吉孝氏

 フィンテック革命は金融機関に、これまでにない大きな影響を与えようとしています。銀行・証券・保険などからなるインターネット金融サービス業のエコシステムを構築したSBIグループ。同グループを率いる北尾吉孝氏(SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長)が、インターネット革命とフィンテックの進化について2回にわたり解説します。第2回は、フィンテックにおける金融業の実践的戦略をSBIグループの例をもとにまとめています。

金融業における実践的戦略

 では、第1回で説明したように現時点で金融業に利用できる諸技術の近未来でのアベイラビリティ(利用可能性)を踏まえて、これからの金融業の実践的な戦略について見ていくことにしましょう。ここでは、我々SBIグループ(以下、SBI)を例にとって詳細に解説していきます。

SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長<br>北尾吉孝氏 SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長
北尾吉孝氏

 第一フェーズでは、SBIが構築した金融サービスの企業生態系(フィンテック1.0)に新しく発展した技術やサービスをいち早く導入し、まずフィンテック1.5の世界への移行を進めます。

 こうした技術は、その多くが前述したように国内外のベンチャー企業により生み出されていますから、そうした技術へのアクセスを図るため、SBIでは「FinTech ファンド」を創設しました。

 そのファンドから要素技術を有するそれぞれの技術分野の有力ベンチャー企業への投資を通じたアクセスを図っています。

 第二フェーズでは、フィンテック1.5に属する様々な技術をいち早く我々の金融サービス事業の生態系に導入し、顧客便益性を向上するとともに、競争優位の確立を目指します。

 第三フェーズでは、フィンテック2.0の技術すなわちブロックチェーンを使用した実証実験を様々な金融サービス分野で実施します。当然ながら、どのような分野が利用可能で、かつ効率的な取引につながるのかという検討は十分に行う必要があります。ブロックチェーンは次のような金融サービス取引分野で有効的に利用できると現時点で考えています。

・債券取引
・デリバティブ取引
・スワップ取引
・商品取引
・OTC市場
・レポ市場
・仮想通貨取引

 こうした取引分野での活用だけでなく、多くの金融機関では早期のブロックチェーンの利用はコスト削減が目的でしょう。例えば、銀行ではブロックチェーンによって創出された仮想通貨の分散型のネットワークで仮想通貨とリンクさせて入出金、送金、借入といった日常的な金融業務をスタンドアローン型のウォレットを通じて行い、大幅なコストダウンを図るはずです。保険分野でもスマートコントラクトにより保険支払いを自動化していくでしょう。こうしたことは、今後1~2年内に広く活用されると考えています。

 最終フェーズでは、ブロックチェーンと仮想通貨の活用で国内は言うに及ばず、グローバルなリンクを世界の主要なパートナーと協働で構築していくことになります。

 SBIが米国のリップル(Ripple Labs Inc.)に出資し、SBI Ripple Asiaというジョイントベンチャーを創設したのも、米国のR3社のコンソーシアム参加企業となり、R3社の外部筆頭株主となったのも、こうしたブロックチェーンのグローバルリンクやグローバルスタンダードを意識したからです。国際的なネットワークの構築は残念ながら日本企業主導では無理です。ただ、そこに参加し、そのネットワークを利用することはできます。とりわけアジア地域では、SBIはそれなりのネットワークをアジア各国のローカルパートナーと創り上げているためSBI Ripple Asia をうまく使い、ブロックチェーンの国際的ネットワークのアジアパートの創設を図りたいと考えています。そうすることによって投資先ベンチャー企業の活躍の場を提供できるのです。

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