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東芝監査を巡る混乱と「期待ギャップ」問題

郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

 8月10日、東芝は、2017年3月期の有価証券報告書を関東財務局に提出した。同報告書には、2017年3月期から新日本監査法人に代わって会計監査人に就任したPwCあらた監査法人(以下、PwC)の監査報告書が添付されており、2017年3月期の財務諸表について「限定付き適正」、内部統制について「不適正」とする監査人意見が、それぞれ表明されている。

 PwCは、一部とは言え、「適正な決算ではない」との評価を行なったが、それに対して東芝は、「正しい会計処理がなされたと確信しており、過年度訂正等の対応をする必要はないと認識している」とリリースし、PwCの監査人意見を無視し、決算の修正は一切行っていない。

 4月11日に、2017年3月期の第3四半期の決算レビューについて、PwCが「意見不表明」として以来、注目を集めてきた東芝の決算は、会社と会計監査人との意見が対立したままの有価証券報告書提出という異常な結末となった。

 この問題の根本には、一連の会計不祥事と米国原発事業による巨額損失によって、日本を代表する伝統企業であった東芝が、社会の信頼を失っている現状がある。そのような状況にある会社の会計監査において、法令やルールにしたがって会計監査を行う立場にある監査法人が、社会の要請にどのように応えるべきなのか。まさに、「監査法人のコンプライアンス」そのものに関わる問題だと言えよう。

争点は原発建設会社買収による損失を計上すべき時期

 PwCが「適正ではない」としたのは、「東芝の子会社である米原発子会社ウエスチングハウス(WH)が、原発建設などを行うCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)を買収したことによって最終的に生じた工事契約にかかる損失を、東芝が認識すべきだった時期」についてだ。

 以前、この連載の「環境変化への不適応を糊塗し続けた東芝」でも述べたが、2015年12月に行われたS&Wの買収には、WHの原発事業における巨額の損失が発覚するのを防ぐ目的があったのではないかと指摘されている。原発建設においては規制強化による安全対策等によって建設コストが増大しており、その負担割合を巡ってWHとS&Wとの間でも係争が発生していた。

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