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フィンテックが金融業に創造的破壊をもたらす理由

SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長 北尾 吉孝氏

 フィンテック革命は金融機関に、これまでにない大きな影響を与えようとしています。銀行・証券・保険などからなるインターネット金融サービス業のエコシステムを構築したSBIグループ。同グループを率いる北尾吉孝氏(SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長)が、インターネット革命とフィンテックの進化について2回にわたり解説します。第1回は、技術革新とフィンテックの進化についてです。

インターネット革命とフィンテックの進化

 私は、1999年に『E‐ファイナンスの挑戦』(東洋経済新報社)を仲間たちと上梓しました。その本の「はじめに」で私は次のように書きました。

SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長<br>北尾吉孝氏 SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長
北尾吉孝氏

「シュムペーターの言葉から明らかなように、インターネットはそれが生み出す『新市場、新産業組織形態』等により『創造的破壊』の過程をこれまでに人類が経験したことのないようなスピードで全地球上にもたらしていくと思われる。こうしたプロセスが最も早く起きる産業はインターネットと最も親和性が高いと言われている金融業であろう。
 私どもファイナンスグループ各企業は、インターネットに内在する強力な破壊力を利用し、日本のいびつな金融システムを是正することにより、投資家や様々な金融サービスの消費者に、より高い経済性と利便性を提供できるシステムへ移行させるために一石を投じたいと願っている。過去の歴史が証明するように『創造的破壊のプロセス』は国民経済に決してマイナスをもたらすものでなく、長期的、全体的に見れば大きなプラスをもたらすものであろう。我々はそう確信して、既存の金融業に挑戦する」

 私は、このようにインターネット革命を高らかに標榜し、その革命の成就に向けて今日までの17年間ひたすらに邁進してきました。その成果については後述しますが、当時想定していたようなスピードと破壊力を持ってこの「創造的破壊のプロセス」が進行してきたことは、衆目の一致するところでありましょう。

フィンテック1.0の誕生

 SBIグループは1999年の創業から約16年の歳月をかけて、銀行・証券・保険などからなるインターネット金融サービス業の生態系(エコシステム)を世界で初めて構築しました。私はこの生態系をフィンテック1.0と呼んでいます。ちょうど日本では2015年頃からフィンテックという用語が頻繁に使用されるようになってきました。

 米国では日本より2~3年早く注目され始め、次第に脚光を浴びるようになりました。このフィンテックという用語で多くの人が意味したことは、単なるオンライン証券、オンライン銀行、オンライン損保といった従来からある金融サービス業のネット化ということではありませんでした。

 このネーミングで人々が表現しようとしたことは、金融サービスの新たなソリューションの提供なのです。そうした動きの先陣を切ったのは米国のペイパル(Pay Pal Holdings Inc.)です。ペイパルは1998年の創業で、電子メールアカウントとインターネットを利用した決済サービスを提供しており、そのユーザー数は1億7900万人(2015年末)です。ペイパルにクレジットカード情報をあらかじめ登録しておけば、IDとパスワードを入力するだけでオンラインショッピングの決済がオンラインショップにカード情報を伝えることなく低コストで完了します。

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