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経営層のための「稼ぐ力」を高める不動産戦略

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グローバル戦略で抜け落ちる不動産管理の視点

JLL 執行役員 コーポレート営業本部長 佐藤 俊朗氏

 最新の世界のオフィス市況サイクルでは、賃料コストは、ニューヨークではほぼピークにあり、インドのデリーやムンバイでは急速な上昇が始まった。中国では上海に続き北京でも間もなくピークアウトし下落が加速する。大半の主要都市において賃料コスト上昇傾向が継続している(図表1:JLLプロパティクロック2017.Q2)

図表1 JLLプロパティクロック2017.Q2 図表1 JLLプロパティクロック2017.Q2

 日本企業は売り上げの6割近くを海外事業に依存しているが、あなたの会社は世界各国の主要拠点の不動産市況の変化に対し、リスクヘッジや戦略的な対応ができているだろうか? オフィスをはじめとする不動産のロケーション、コストやその活用のあり方は経営全体を左右するが、ほとんどの日本企業は海外子会社の不動産を管理することを苦手とし、ガバナンス(統治)が効いていない。グローバル企業がどのような不動産管理を行っているのか知ると、日本企業がいかに損をしているかが分かる。

日本企業は海外子会社のガバナンスに弱い

 オリンピックによる内需拡大に期待しつつも、国内市場の成長鈍化も見られ、日本企業は海外を「稼ぐ場所」とする姿勢をさらに強めている。日本貿易振興機構(ジェトロ)の「ジェトロ世界貿易投資報告2016年版」によると、2000年度(イチロー選手がメジャーリーガーとなった年)に28.6%であった日本企業の海外売上高比率は、2015年度には58.3%となり、ほぼ毎年最高を更新し続けている。

 一方で、海外子会社の巨額損出が露呈し、日本で積み上げてきた信用を一気に失墜させるような事態が頻発している。政府主導で、企業の「稼ぐ力」を強くするためのコーポレートガバナンス(企業統治)の向上が推進され、各企業は、一様にROE(自己資本利益率)向上等の対策を打ち出しているが、海外子会社まではうまく統治できていない実態があるのではないか。

 第2回「知らないと損する企業不動産財務の視点」で詳しく述べたが、企業が事業活動のために使う不動産は、財務や事業にもたらすインパクトの大きさから、人に次ぐ第2の経営資源であると言える。その不動産管理において、ビジネス拡大のスピードの速さに対し、後手に回っている。現地任せのオートパイロット(手放し運転)状態では、海外子会社へのコーポレートガバナンスの弱さからリスクが蓄積し、肥大化し、それがあるきっかけではじけるとき、損失拡大等、企業全体の価値を大きく下げてしまう引き金にもなりかねない。

欧米企業に劣る海外不動産管理

 ガバナンスとは、まとめ、治めることであり、効率的に企業価値を向上させることがコーポレートガバナンスの目的であるが、こと海外子会社における不動産管理については、まとまっても、治まってもいないのが多くの日本企業の実態である。海外で商品や生産力、コンテンツ等で強い競争力を持つ日本企業であるが、残念ながらこの分野では欧米企業との競争に劣っている。

 グローバルに先進的な不動産管理を実践している日本企業は至って少数である。これから述べる実態は、その少数の企業を除き、海外事業展開している大半の日本企業の現状に当てはまる状況であると考えられる。

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