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リクルートのすごい構"創"力

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すべての事業の基盤は「リボンモデル」

ボストンコンサルティンググループ日本代表 杉田 浩章氏

「教育環境格差をなくしたい」という強い意志

 リクルートの事業開発の起点であり、リボンモデルを描く第一歩となるのが、メソッド1に当たる「不の発見」だ。リクルートにおける「不」とは、「不便」「不満」「不安」など、あらゆるネガティブな概念の象徴。消費者、企業・事業者、産業や社会などに、大きな「不」が存在するのであれば、それを解消するためのイノベーションが求められ、その実現にはビジネスチャンスがあるという発想だ。

 2012年に事業化された、小中高生向けのオンライン学習サービス「スタディサプリ」(旧・受験サプリ)も、受験生の「不」を解消するために生まれた。

 2010年秋、リクルートが提供する「リクナビ進学」などの進学事業の先行きを議論している中で、当時事業企画担当だった山口文洋さん(現・リクルートマーケティングパートナーズ代表取締役社長)の「今の進学事業が見落としている提供価値はないのか?」という問いかけがきっかけだった。

 翌2011年、全国数百名の受験生、数十名の教員や保護者を対象に調査を開始。「予備校に通いたいけれど通えない」層が約3割もいることがわかった。

 「年間何十万円もの授業料は払えない」「参考書を買うのもためらわれる」という家計難に悩む高校生やその親たち。近くに塾や予備校がなく、どう勉強すればよいかもわからない地方の受験生。多くの高校生が、講師という先導役も、励まし合い競い合う仲間もないまま、孤独に勉強を続けている現状に、メンバーは衝撃を受けたという。

 こうした「教育環境格差」という「不」を解消するという強い使命感と意思を持ち、New RINGへ新ビジネスを提案。立ち上げ当初の試行錯誤、価格改定を経て、月額わずか980円ですべての講座をオンラインで受講できるようにする「受験サプリ」がスタートした。

 ここで、前述のコラム「イノベーションのジレンマ」を思い出してほしい。既存の塾や予備校は、高い授業料を払えるハイエンド層を相手に、受験生獲得競争を繰り広げていた。ここに月額980円なら払えるというローエンド層の「不」を解消し、受験業界に「破壊的イノベーション」を仕掛けたのがこのサービスだと見ることもできるだろう。

 このイノベーションは、講座数が増えサービスが拡充されるにつれ、ハイエンド層をものみ込んでいく。まさに業界構造を大きく変える「不の発見」だったと言えるだろう。

 「スタディサプリ」は2017年2月時点で、講義数は約1万にまで増え、累計有料会員数も42万人を超えたという。「学びたいと願う誰もが平等に、いつでも、どこでも、学べる世界」を目指し、「サプリ」はさまざまな社会人学習にまでその領域を広げている。

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